Wednesday, May 10, 2017

琉球の自己決定権と独立論

里正三『琉球独立への視座――歴史を直視し未来を展望する』(榕樹書林)
はじめに
1 世界経済の仕組み
2 成長路線の限界
3 日本型システムの問題点
4 民主主義と社会参加
5 「日本復帰」への考察
6 中国脅威論
7 戦争を考える
8 目指すべき琉球社会
9 新生琉球の経済政策
10 正義は我が方にあり
20104月に国連人種差別撤廃委員会は、「沖縄における軍事基地の不均衡な集中は、住民の経済力、社会的及び文化的権利の享受に否定的な影響があるという現代的形式の差別に関する特別報告者の分析を改めて表明する(第2条及び第5条)」とし、次いで20149月には「日本が、その立場を見直し、琉球を先住民族として承認することを検討し、また彼らの権利を保護するための具体的な措置をとることを勧告する」としている。「琉球処分」という併合前には国家を形成していたという点で、アイヌ民族よりもはるかに先住民族の権利を有する琉球列島の人々に対して、軍事植民地として継続するために「先住民族の権利」を認めない日米政府は「ならず者国家」である。
琉球民族独立総合研究学会に属し、学会誌にも琉球独立論を執筆した著者による1冊である。大阪に生まれた著者の祖母と叔母が加計呂麻島出身という。1975年に沖縄に移住し、市民運動、平和運動に参加してきた。
琉球王国に対する「琉球処分」の歴史や、現在に至る構造的沖縄差別を前に、うちなんちゅの自己決定権を実現するために、日米による軍事植民地からの脱却を目指す。そのための指針は国際人権法であり、人種差別撤廃条約であり、先住民族権利宣言である。それゆえ、目指すべき琉球社会は徹底した民主社会であり、「非武の邦」である。著者は琉球独立論の背景としての世界経済認識や日本型システムの問題性も詳しく論じている。松島泰勝による琉球独立論の提唱と併せて読むべき1冊だ。
奥付に記載された出版社の住所は「琉球共和国宜野湾市宜野湾」である(郵便番号とEメールアドレスは日本国のものを使っている)。