6.クロアチア
ヘイト・クライムの報告例は少なく、反ユダヤ主義や不寛容の問題は起きていない。「テロリズム予防・抑止国内戦略」と「行動計画」には、過激なイデオロギー拡散や、そのイデオロギーに基づく行為の予防のための措置が含まれる。テロリズム関連で収集された情報がこれらの措置の発展に役に立つ。人種主義や排外主義のイデオロギーや集団についての特別法の枠組みは、公開集会における行為、スポーツイベントにおける行為、刑法第325条がある。
ヘイト・スピーチに関しては、欧州評議会の2008年枠組み決定を国内法に導入し、刑法を改正し、2013年1月1日に施行した。警察庁は「ともにヘイト・スピーチに反対する」という予防プロジェクトを実施しており、政府、研究者、スポーツ団体、市民社会団体、メディア、教育機関、スポーツ選手、音楽家、美術家等と協力している。
ホロコーストについて学ぶことは、教育課程の中心部分であり、「国際ホロコースト記憶連合」の教材を利用している。反ユダヤ主義の定義についても同連合の定式を採用しており、2021~27年の人権保護と差別との闘い国内計画に取り入れている。
ヘイト・クライムに関する情報収集を行っている。インターネット上野ヘイト・スピーチの予防を目的とする措置をとり、警察学校は差別と闘い、基本的人権を尊重する教育課程と啓発活動を警察官に提供している。
7.キューバ
キューバにはネオナチなどの人種主義・排外主義運動、イデオロギー、過激主義集団の現象は見られない。人種主義、人種偏見、人種差別と闘い、撤廃するための法と政策が採用されている。憲法第41条と第42条には平等と非差別の原則が含まれる。2019年11月、「人種主義と人種差別に反対する国家プログラム」を採択した。
政府は国際レベルでの人種主義と人種差別、そのためのソーシャル・ネットワークの利用に関心を持っている。新型コロナは貧困者、アフリカ系人民、移住者への差別を加速した。キューバはダーバン宣言と行動計画の完全実施のために努力している。
8.キプロス
人種主義犯罪とヘイト・スピーチを犯罪化する法律枠組みがあり、人種、宗教、皮膚の色、ジェンダーに基づくコミュニティ間の敵意を助長する目的の公然たる行為を規制している。人種差別撤廃条約及び欧州評議会のサイバー犯罪条約と追加議定書の当事国である。2008年のEU枠組み決定は国内法に導入されている。
警察官への研修には人権と多様性の保護と尊重、差別、排外主義、人種主義、過激政治運動との闘いが含まれる。警察と14のNGOの間で人権保護促進メモランダムが締結された。警察と拘禁施設への訪問、不服申し立て、情報交換、教育が含まれる。
9.ドミニカ共和国
欧州やアメリカのような人種主義は存在しないが、被害を受けやすい集団に対する差別事件は起きている。憲法第39条は非差別の原則を定める。刑法第336条は差別行為を犯罪化している。ハイチ出身者に対する差別、性的指向とジェンダー・アイデンティティに基づく差別と闘う法律が制定された。
2011年、検察庁に人権局が設置された。人権侵害の予防と被害者支援を目的とし、検察官に対する研修プログラムを開発している。ナチスや反ユダヤ主義の報告例はない。ハイチ国籍者に対する排外主義が経済問題や文化問題に隠れて、存在している。
10.エクアドル
ネオナチやスキンヘッド過激集団、その犯罪は記録されていない。人種主義と差別は法律で持って非難している。
2016年、「アフリカ系人民のための国際10年」の履行のための活動計画に従った国家しえ策を採用している。「人種差別、民族的文化的排除に反対する多国籍計画」を採択し、雇用、健康、教育へのアクセスを是正する措置を定めた。刑法第176条は差別を犯罪としている。
2014年、人民平等委員会を創設し、先住民族、モントゥビオ、アフリカ系アクアドルジンの代表をいれている。平等を保障し、差別を根絶する公共政策を実施する目的である。委員会は「国民と先住民族、アフリカ系エクアドル人、モントゥビオ人民の平等国内アジェンダ2019-2021」を定めた。ヘイト・スピーチと闘う措置を講じている。
11.ドイツ
新型コロナが極右過激集団をいっそう過激化させ、「帝国市民」のような集団が盛んに活動している。
内閣は、2019年10月、極右過激主義やヘイト・クライムと闘うために9ポイント計画を策定し、公共サービスにおける極右過激主義を捜査する措置を定めた。連邦憲法擁護庁と人種主義に反対する内閣委員会は、2020年12月2日、89の包括的カタログを策定した。極右過激主義、人種主義等と闘うさまざまな政策領域におけるプロジェクトの最終パッケージがつくられた。2020年、連邦内務省は、例えば「Combat 18 Germany」「Nordadler」「Wolfsbrigade44」「Geeinte DeutscheVolker und Stamme」「帝国市民」等の極右団体を禁止した。
2017年、「国際ホロコースト記憶連合」が定式化した反ユダヤ主義の作業定義を受容している。2018年、「ドイツにおけるユダヤ人の人生のためのコミッショナー」を任命した。
12.ギリシア
人種主愚を特定し、犯罪を防止する検察と警察の能力が高まってきてこともあり、人種主義動機による特徴を持つと思われる事件の数が、2018~19年、増加している。2020年10月、アテネ控訴審は、極右政党の「黄金の夜明け」事務局長と元議員たちを犯罪組織の指揮と関与で有罪とした。
2015年の法律4356号によって「人種主義と不寛容に反対する国家委員会」が設置され、「人種主義と不寛容に反対する行動計画2020~23年」を策定した。
2019年の法律4619号によって改正された刑法第82a条は、被害者が彼/彼女の人種、皮膚の色、国籍又は民族性、世系、宗教、障害、性的指向、アイデンティティ、ジェンダーに基づいて選択された場合、人種主義的性格の犯罪が行われたとした。刑法第184条2項は、人種、皮膚の色、国民的民族的出身、世系、宗教、障害、性的指向、アイデンティティ、ジェンダーに基づいて特定された集団又は人に対して犯罪や暴力を煽動する行為を犯罪とする。1979年の法律第927号は、ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪、ホロコースト、ナチス犯罪の存在や深刻さを大目に見、矮小化し、悪意を持って否定する目的の行為を犯罪とする。これらの行為が特定の集団やその構成員に対する暴力や憎悪を煽動しそうな場合、刑罰加重事由とする。人種主義犯罪の被害者のためのガイドが準備されている。
2019年11月8日、「国際ホロコースト記憶連合」が定式化した反ユダヤ主義とホロコースト否定の作業定義を受容し、反ユダヤ主義を監視し、ホロコーストの記憶を保護する特別代表を任命した。