Tuesday, December 28, 2021

「桜を見る会」を追及する法律家の会・緊急声明

 

緊 急 声 明

 

2021年12月28日

「桜を見る会」を追及する法律家の会

事務局長 弁護士 小野寺 義 象

世話人  弁護士 米 倉 洋 子

世話人  弁護士 泉 澤   章

                                   外

                             

私たち「『桜を見る会』を追及する法律家の会」(以下「法律家の会」という)は、本日、東京地検特捜部が、安倍晋三元首相らを再び不起訴処分にしたことについて、下記の声明を発表する。

1 法律家の会は、安倍元首相がその在任中、「桜を見る会」の前夜祭を都内一流ホテルで催した際、参加した後援会員らに対して公職選挙法で禁止されている寄附行為を行ない、その収支について政治資金規正法所定の収支報告をしなかったことは、明白な犯罪行為であるとして、2020年5月21日、東京地検特捜部に第1次刑事告発を行った。この告発は、過去に例を見ない977名もの法律家による大規模告発となった。さらに、法律家の会は、同年12月21日、検察の捜査によって新たに判明した安倍元首相が代表である資金管理団体「晋和会」の補填金の関与を追及するため、第2次告発を行った。

しかし、これらの告発に対して東京地検特捜部は、同年12月24日、後援会責任者1名を政治資金規正法収支報告不記載罪で略式起訴するのみで、安倍元首相については不起訴処分とした。

  そこで、法律家の会は、この不起訴処分を不服として、21年2月2日、東京検察審査会に審査申出を行い、これを受けて、同年7月15日、東京第一検察審査会は、安倍元首相らを「不起訴不当」とする議決を行った。法律家の会は、この議決後の同年8月27日、後援会による収支報告書訂正もつじつま合わせの虚偽記載であるとして、第3次刑事告発を行った。

 今回の東京地検特捜部による不起訴処分は、東京第一検察審査会による上記「不起訴不当」の議決と、第3次告発に対してなされたものである。

2 昨年末の12月24日になされた東京地検特捜部による安倍元首相の不起訴処分は、首相(当時)の違法行為への関与という重大な問題に踏み込むことなく、問題を矮小化して幕引きしようとした政治的な判断であり、安倍元首相も、これで政治生命の危機は乗り切れたと考えたに違いない。

しかし、東京第一検察審査会は、検察の幕引きを容認しなかった。

東京第一検察審査会は、安倍元首相の公職選挙法違反(寄附)及び政治資金規正法違反(晋和会会計責任者に対する選任監督責任)について不起訴は不当とし、さらに、晋和会会計責任者の政治資金規正法(収支報告不記載)についても、不起訴は不当と議決した。

議決は、「総理大臣であった者が、秘書がやったことだと言って関知しない姿勢は国民感情として納得できない。国民の代表である自覚を持ち、清廉潔癖な政治活動を行い、疑義が生じた際には、きちんと説明責任を果たすべきである。」と、安倍元首相の政治家としての資質の欠如を痛烈に批判した。

また、前夜祭参加者の寄附の認識について「寄附の成否は個々に判断されるべきであり、一部の参加者の供述をもって参加者全体の認識の目安をつけるのは不十分である。単純に提供された飲食物の内容だけで認識を判断するのは相当でない。」とした。

さらに、安倍元首相の犯意について、「秘書らと安倍の供述だけでなく、メール等の客観的資料も入手した上で、安倍の犯意の有無を判断すべきである。」とし、晋和会の収支報告不記載については、「前夜祭開催に西山は主体的、実質的に関与していた。領収書は、一般的には宛名に記載された者(晋和会)が領収書記載の金額(前夜祭の不足分)を支払ったことの証憑とされ、宛名となっていない者が支払ったという場合は、積極的な説明や資料提出を求めるべきであり、十分な捜査が尽くされていない。」と、検察捜査の生ぬるさを具体的に指摘して厳しく批判した。

このような議決に基づいて再捜査をするのであれば、東京地検特捜部は、捜査対象者を拡大したうえで事情聴取を継続し、さらに強制捜査を実施してメール等の客観的資料の検討を徹底して行うなどの捜査を遂げる必要があった。しかし、議決後、東京地検特捜部が、強制捜査を含む大規模かつ徹底的な捜査を行ったなどという情報に接したことはない。今回の東京地検特捜部による不起訴処分は、おざなりな再捜査による結果と言わざるを得ない。

3 さらに、第3次告発は、安倍元首相の秘書を略式起訴する際に「訂正」された後援会の収集報告書の虚偽性を突くものであり、違法な寄付金の原資がどこから来たのかに関わる重要な告発である。収支報告書の「訂正」がつじつま合わせの虚偽記載であることが明白である以上、不起訴処分が妥当であるとは到底言い難い。森友学園問題の国賠訴訟で被告となった国は、本年12月15日に、請求を「認諾」することで訴訟を強制的に終了させ、真相を闇に葬ろうとして、世論の強い批判を浴びている。本日の東京地検特捜部による不起訴処分も、政権を忖度して真相究明に蓋をするものであり、検察の存在価値自体が厳しく問われることになる。

4 今回の東京地検特捜部の不起訴処分により、第1次・第2告発は終了したが、第3次告発については、今後、東京検察審査会への審査申し出をする予定である。

私たち法律家は、わが国で法の支配が徹底され、「桜を見る会」と前夜祭問題における法的責任の所在が明確になるまで、これからも追及の手を緩めることはない。

以上