D 紛争予防のために政府内の適切なメカニズムの設置
2012年以来報告した61か国が、紛争予防のために政府内の適切なメカニズムを設置している。キューバは、1985年の結社法のもとで、司法省結社局が宗教団体の法的地位を規制する権限を有し、さまざまな宗教のメンバー間の緊張を監視している。
バーレーンは、国内人権機関が宗教の自由の権利の享受を監視している。
メキシコによると、宗教問題監督官が公開の礼拝、教会、宗教集団・結社に関する憲法的法的規定に従って監視する権限を有している。
ボリビアは、反レイシズム国内委員会が、2010年のレイシズムと差別撤廃法によって設置され、宗教に基づく差別からの保護を提供している。
パキスタンによると、信仰調整委員会が地域レベルのさまざまなコミュニティの対話と相互理解を促進している。
スロヴェニアは、宗教コミュニティ・メンバー間の緊張に対処する公式のメカニズムはない。しかし、文化省宗教コミュニティ事務局は宗教コミュニティの状況を監視している。紛争予防のため、宗教代表者の協議によってヘイト・スピーチに対処している。「残虐犯罪に導く暴力の煽動予防・宗教指導者の行動計画」もある。
トルコは、2016年に人権平等機関を設置し、宗教的理由による差別禁止も管轄し、差別被害の申し立てを受理している。
E 政府公務員の研修
人権高等弁務官は、過去2年間に12カ国が公務員研修を促進する措置をとったと報告したことを歓迎した。ただ、今回の12カ国の報告には関連情報の記載がない。
F 差別の原因やこれに対する戦略を討論するリーダーの努力の助長
2か国から報告があった。バーレーンは、司法省イスラム局がイマームのために多元主義と共存の価値に基づいた研修計画を設定した。現代の発展に即して、過激イデオロギーと闘い、平等を促進する目的である。
G 差別の煽動になる宗教的憎悪の唱道など不寛容に反対する発言
バーレーンによると、国王は国際ニュースで、寛容や啓蒙、人権の発展と維持、排除なくすべての人のための改革を語ってきた。国内人権機関は2019年と2020年に、宗教的寛容、宗教の自由の尊重を促進し、暴力と過激主義を非難してきた。
パキスタンによると、不寛容と敵意の煽動事案が処罰の措置を様々に講じることで、抑止されている。Asia Bibi事件の結果、公務員がとった措置が知られる。2018年、イスラム学者のファトワが、平和、調和、寛容を訴えた。
トルコによると、政府の公務員は宗教に基づく不寛容、敵意、暴力に強く反対している。2020年4月20日、エルドガン大統領はトルコのアルメニア総主教に手紙を出した。(手紙の内容は紹介されていない)
H 宗教に基づく暴力煽動を犯罪化する措置
バーレーン、イタリア、ラトヴィア、パキスタン、ポーランド、ロシア、スロヴェニアは宗教に基づく暴力の煽動を禁止する国内刑法に関する包括的情報を報告した。2012年以来報告した49か国が、行動計画でこの枠組みを採用している。枠組みの多くは、オンラインを含む、人種、国民、宗教的憎悪の煽動に対処する。これらの法は、暴力を促し、宗教的憎悪を煽動する組織の設立や参加、そうした文脈の公開集会、戦争犯罪、ジェノサイド、人道に対する罪の否定、暴力の煽動とテロリズム行為の連結を射程にいれている。枠組みは通常は犯罪化、重罰化である。
I ヘイト・クライムに反対する措置
2012年以来報告してきた29か国が国内レベルでヘイト・クライムに対処している。
キューバは、刑法が、国民、民族、人種又は宗教集団を破壊する意図で実行した行為を犯罪としている。
イタリアによると、反差別安全監督官が「イタリア・イスラム教共同体」と協力して警察官にイスラムへのガイドを教え、2018年12月、「イタリア・ユダヤ人共同体連盟」と協力してユダヤ教のガイドをつくった。宗教憎悪動機による犯罪を予防し、闘うため、警察官に啓発、教育する目的である。監督官は2020年1月21日、警察官向けの雑誌で「ヘイトが犯罪になる時」という特集を組んだ。
ポーランドは偏見動機犯罪に対処する法的枠組みを報告した。刑法は、禁止行為実行者の動機が行為の重大性を評価し、刑罰を量定する際に考慮されるとする。警察は2018~21年の行動計画で、宗教的差異に基づく憎悪動機犯罪に対処する。
ラトヴィアによると、刑法は人種主義、国民、民族又は宗教動機で犯罪が行われた場合、刑罰加重事由としている。
ロシアによると、刑法は政治、イデオロギー、人種、国民又は宗教憎悪又は敵意に基づいた犯罪実行を刑罰加重している。刑法357条はジェノサイドを犯罪としている。