欧州ジェンダー平等研究所(EIGE)の報告書『EUと国際的なフェミサイド測定――ある評価』(2021年)
*
5. フェミサイドについての指標と分類システムを定義するために(概観)
6. 各国レベルのフェミサイド(定義と情報収集)
7. NGOによるフェミサイドの情報収集
8. 勧告
*
「5.フェミサイドについての指標と分類システムを定義するために(概観)」では、第1に、フェミサイドの構造的にジェンダー化された条件や類型が論じられる。故意の殺人と定義するか、故意でない殺人も含むかで議論は分かれる。故意の女性殺人と定義すれば、犯行者に動機があったことが必要となる。あるいは、社会経済文化的文脈、特に不平等なジェンダー規範、ジェンダー役割などが問題となる。女性に対する「暴力システム」が存在したかどうかである。故意でない殺人が浮上するのは、貧困、不安定労働、麻薬等の犯罪的環境があるからである。構造的要因が行動要因に変換され、フェミサイドとなりうる。犯行者と被害者の年齢、性別、ジェンダー、セクシュアリティ、両者の関係。フェミサイドがジェンダーに動機づけられたと定義するためには、犯行者の女性嫌悪、犯行者と被害者の不平等な力関係、パートナーや家族との関係、暴力の前歴、信頼関係又は県営的関係、被害者の子どもの有無、妊娠の有無、犯行者が関係のやり直しを考えたか否か、性暴力の文脈、意思決定における抑圧、傷害、人身売買が関連する。
故意でないフェミサイドでは、殺人が公共の場で起きたか私的領域で起きたか、親密なパートナーの暴力か否か、性暴力か、危険な堕胎のような故意でない殺人か、危険な労働条件など。
第2に、情報収集である。EIGEは、フェミサイドを故意の殺人として、被害者の性別、犯行者と被害者の関係、動機を問題にしてきた。EUや国際機関の情報収集システムは、被害者の焦点を当てつつ、犯行者や関係にも視線を向ける。年齢、性別、ジェンダー・アイデンティティ、地理的位置、社会経済状態、雇用状態、国籍、出生国、市民権、居住国、障害の有無、妊娠である。犯行者については、精神的健康、住居問題、常習性である。殺人の場所(家屋内か路上か、開かれた場か)、アルコール・麻薬関連、殺害方法、「沈黙の目撃証人」としての子どもについての情報を収集する例もある。
第3に、EUと国際機関の提示するフェミサイドの類型は次のようにまとめられる(図表12)。
・パートナー又は配偶者による女性殺人
・家族による女性殺人
・妊娠女性の殺人
・親密でないパートナー殺人(性暴力)
・名誉殺人
・FGM関連の死亡
・女児殺人
・安全でない堕胎による死亡
・LGBT殺人(性的アイデンティティ等)
・女児堕胎
・人身売買関連の殺人
・危険な労働条件の結果としての殺人(女性の売春)
・犯罪環境(ギャング、麻薬)における殺人
・レイシストによるフェミサイド
・女性嫌悪の結果としての殺人
・不必要な手術(子宮摘出等)による死亡
・国家によって許された殺人(不作為)