関東大震災朝鮮人中国人虐殺100年を契機に、この6~7月、「コリアン・ジェノサイド」について講演をしてきた。同じ講演を7月25日、玉川上水駅近くのStitchでやらせてもらう。おおむね柱立ては固まってきたので、そのレジュメをアップしておく。(当日は写真も見ていただく)
8月5日にはダーバン+20のオンライン・シンポジウムで同じテーマを取り上げる。
https://durbanplus20japan.blogspot.com/2023/06/85-100.html
また、8~9月にも東京や札幌で、同じテーマの講演を予定している。
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2023年7月25日
Stitch/玉川上水
コリアン・ジェノサイドとは何か
関東大震災時朝鮮人虐殺の世界史的位置
前田 朗(朝鮮大学校講師)
<報告の趣旨>
①
関東大震災朝鮮人虐殺をジェノサイドの視点から考える。
②
関東地方における一つの事件としてだけではなく、日本による朝鮮植民地支配全体の中に位置付ける。
③
世界史における出来事として位置づけ、近現代におけるジェノサイドと比較する。
④
朝鮮植民地支配と虐殺事件を国際法のレンズを通して見直す。
⑤
生物学的物理的ジェノサイドだけでなく、文化ジェノサイド概念を参考に、近現代日朝関係史及び在日朝鮮人史を再検証するための視座を設定する。
写真①ほうせんかの家と追悼碑
荒川土手、四つ木橋
一 はじめに
1 人種差別撤廃委員会 1995年、日本が人種差別撤廃条約批准
1997年、人種差別撤廃委員会を傍聴
ヘイト・スピーチ、ヘイト・クライムに出会う
1998年秋「テポドン騒動」でヘイト・クライムと表現
2 国連人権委員会 1998~2000年、国連人権委員会に報告
Kanto
Genocide in 1923
Korean Genocide in Kanto at 1923
Armenian
Genocide、Jews Genocide
3 国連国際法委員会 1991~95年の植民地支配犯罪論
1996年・人類の平和と安全に対する罪の法典草案
1998年・国際刑事裁判所規程
4 ダーバン会議 2001年の獲得目標:植民地支配は人道に対する罪
宣言:植民地支配下の奴隷制は人道に対する罪
5 最近の研究 加藤直樹『九月、東京の路上で――1923年関東大震災
ジェノサイドの残響』(ころから)
康成銀『康ソンセンニムと学ぶ 朝鮮と日本の2000年』
(スペース伽耶)
『記録集・関東大震災95周年朝鮮人虐殺犠牲者追悼シ
ンポジウム――関東大震災時の朝鮮人虐殺と植民地支
配責任』(朝鮮大学校朝鮮問題研究センター)
二 研究課題
1 ジェノサイド
➡『戦争犯罪論』
『ジェノサイド論』
2 植民地支配犯罪
➡「植民地支配犯罪論の検検討」
3 人道に対する罪
➡『人道に対する罪』
4 ヘイト・スピーチ/クライム
➡『増補新版ヘイト・クライム』
『ヘイト・スピーチ法研究序説』
『ヘイト・スピーチ法研究原論』
『ヘイト・スピーチ法研究要綱』
写真②横網町公園、慰霊堂
朝鮮人犠牲者追悼碑
石原町遭難者碑
三 ジェノサイドとは何か
1 ラファエル・レムキン
・アルメニアの虐殺を犯罪化する刑法
・1944年著作でジェノサイドを提案
・「国民集団の文化や、言語、国民感情、宗教、経済の存在を解体したり、その集団に属する個人の人身の安全、自由、健康、尊厳や生命を破壊することである。ジェノサイドは、統一体としての国民集団に向けられ、その行為が個人に向けられるのは、その個人の特性によるのではなく、その国民集団の一員であることによる。」
2 ジェノサイド条約
・1948年国連総会、ジェノサイド条約
・「この条約において、ジェノサイドとは、国民的、人種的、民族的又は宗教的な集団の全部又は一部に対し、その集団自体を破壊する意図をもって行う次のいずれかの行為をいう。
(a) 当該集団の構成員を殺害すること。
(b) 当該集団の構成員の身体又は精神に重大な害を与えること。
(c) 当該集団の全部又は一部に対し、身体的破壊をもたらすことを意図した生活条件を故意に課すること。
(d) 当該集団内部の出生を妨げることを意図する措置をとること。
(e) 当該集団の児童を他の集団に強制的に移すこと。」
・要素(1)集団の全部又は一部
・要素(2)集団を破壊する意図
・要素(3)実行行為(a)~(e)
3 国際刑事裁判所規程
・1994年ルワンダ国際刑事法廷規程
・1998年国際刑事裁判所規程
・2002年ハーグ(オランダ)に国際刑事裁判所
4 国際裁判判決
・国際刑事法廷初のジェノサイド事件:1998年ルワンダ法廷アカイェス事件
・カンバンダ事件、ムセマ事件、カイシェマ事件、セルシャゴ事件
・現在は国際刑事裁判所でジェノサイド判決
写真③中国人虐殺現場、大島町大島文化センター前
四 ジェノサイドの現代史
・歴史学、国際政治学におけるジェノサイド
・ジョージ・アンドレプーロス編著『ジェノサイド』
1 ナチス・ドイツのユダヤ人虐殺
2 アルメニア・ジェノサイド
3 クルド・ジェノサイド
4 カンボジア・ジェノサイド
5 東ティモール文化ジェノサイド
写真④王希天虐殺現場、逆井橋
大島町7丁目・サンロード中の橋
大島緑道公園
五 コリアン・ジェノサイドを考える
1 植民地ジェノサイド
・植民地支配犯罪の一環としての植民地ジェノサイド
・1894年の甲午農民戦争
・1896年、第1次義兵運動
・1919年、3・1独立運動
・愼蒼宇「『朝鮮植民地戦争』の視点から見た武断政治と三・一独立運動」『朝鮮史研究会論文集』第58集(2020年)
2 関東大震災ジェノサイド
・鄭永寿「関東大震災朝鮮人虐殺に対する植民地期在日朝鮮人運動と一〇〇年目の課題」『人権と生活』56号(2023年)
3 コリアン文化ジェノサイド
・「同化主義」「皇民化政策」
・「文化統治」朝鮮語使用の禁止、日本語使用の強制
・略奪文化財問題
・在日朝鮮人に対する差別的な在留管理・外国人登録体制
・奪われた民族性回復のための民族学校に対する差別と弾圧
・前田朗「日本植民地主義をいかに把握するか(六)文化ジェノサイドを考える」『さようなら!福沢諭吉』第10号(2020年)
・前田朗「日本植民地主義をいかに把握するか(七)コリアン文化ジェノサイド再論」『さようなら!福沢諭吉』第11号(2021年)
4 ジェノサイド否定:歴史の事実を否定・歪曲するホロコースト否定
・ドイツの「アウシュヴィツの嘘犯罪」
・欧州など30カ国に刑法
・韓国で立法提案(成立せず)
・「慰安婦はなかった」
・「関東大震災朝鮮人虐殺はなかった」
・「朝鮮植民地支配はよいところもあった」といった歴史修正主義発言
・前田朗『ヘイト・スピーチ法研究要綱』
六 おわりに
・総合的研究の必要性
国際法、国際刑法、歴史学、政治学……
・国際的なジェノサイド研究との連接
特に国連ジェノサイド防止事務所