浦田賢治(早稲田大学名誉教授)が主宰する「憲法学舎」のシリーズ2012年版は『核と原発の犯罪性』である。核の犯罪性についてはいまさら言うまでもないことだが、原発の犯罪性をどのような解釈論で展開しているのか興味深い。
浦田賢治:早稲田大学名誉教授、国際反核法律家協会副会長。早稲田大学教授、日本学術会議会委員、スウェーデン・ルンド大学客員教授などを歴任。憲法学舎を主宰。
私が尊敬する水島朝穂(早稲田大学教授)の、さらに先生である。
<目次>
■第1部 ヒロシマからフクシマへ
原発の存続拡散は将来世代への犯罪/C・G・ウィーラマントリー
原発産業は人道に対する罪/フランシス・A・ボイル
核兵器と核エネルギーの犯罪性/浦田賢治
核は人類は共存できるのか/浦田賢治
「原子力の平和利用」を問い直す/浦田賢治
核廃絶という課題/ピーター・ワイス
■第2部 核抑止の犯罪性 フランシス・A・ボイル
フィリップ・ベリガン師による序文
ジョージ・ブッシュ・ジュニア、9月11日事件、法の支配
国際規模で法ニヒリズムを信奉する米国
ヒロシマとナガサキの教訓
核抑止の犯罪性
結論 : デモクラシー 対 核の権力エリート
原発の存続拡散は将来世代への犯罪/C・G・ウィーラマントリー
原発産業は人道に対する罪/フランシス・A・ボイル
核兵器と核エネルギーの犯罪性/浦田賢治
核は人類は共存できるのか/浦田賢治
「原子力の平和利用」を問い直す/浦田賢治
核廃絶という課題/ピーター・ワイス
■第2部 核抑止の犯罪性 フランシス・A・ボイル
フィリップ・ベリガン師による序文
ジョージ・ブッシュ・ジュニア、9月11日事件、法の支配
国際規模で法ニヒリズムを信奉する米国
ヒロシマとナガサキの教訓
核抑止の犯罪性
結論 : デモクラシー 対 核の権力エリート
以上のうち、第1部の冒頭の5本が関連する論考である。
冒頭のウィーラマントリー(元国際司法裁判所判事、国際反核法律家協会会長)の論考は、フクシマ事故直後に発せられた手紙であり、すでに『日本の科学者』に翻訳が発表されたものである。原発の危険性が明らかになったので、その犯罪性を人道と文明の観点から説いている。
次のボイル論考も同様だが、原発産業は人道に対する罪と言いきっているところが凄い。
次の浦田論考は時評や講演の記録であるが、3本続けて読むことで著者の見解が詳細に明らかになる。原発は犯罪だという考え方は、これまでに出されていないと思ったが、1977年に槌田敦が論文で書いていることも示されている。
どの論考も示唆的で、興味深く、大いに学ばせてもらった。
もっとも、法解釈という観点では物足りないのも事実である。槌田論文は、原発は犯罪であると唱えているが、いかなる刑法に違反するのか、法律論は示されていない。浦田論文も、ボイル論文に従って人道に対する罪を念頭に置いているが、人道に対する罪の解釈論は書かれていない。ウィーラマントリー論考も同じである。
ウィーラマントリー、ボイル、浦田という尊敬する碩学だけあって、いずれも大変勉強になるが、まだ法律論になっているとは言い難い。
原発民衆法廷は、7月15日の広島公判で、決定第5号を出した。そこでは原発が人道に対する罪に当たることと、人道に対する罪という国際法上の犯罪だけではなく、これから問われるべきより高次元の犯罪に当たるのではないか、人類だけでなく、環境、地上の生物、将来世代も含めて議論が必要でないかということを示した。
本書と原発民衆法廷の思考は重なり合っているので、これを出発点にして、さらに法律論を深めて行くことが必要だ。