昨日は井上ひさし最後の演劇作品『組曲虐殺』を観た。
心の底から思う存分、泣ける、楽しいお芝居を満喫。
非国民の中の非国民・小林多喜二を、やはり「非国民」作家の井上ひさしが描いた。しかも、それが戯曲としては「遺作」になった。初演を見落したが、こまつ座が、井上ひさし生誕77周年シリーズの最後に『組曲虐殺』を入れていた。なんとも時代感覚ピタリの選択だ。
作:井上ひさし
演出:栗山民也
音楽&演奏:小曽根真
役者は、井上芳雄(小林多喜二)、石原さとみ(田口タキ)、高畑敦子(佐藤チマ、多喜二の姉)、神野三鈴(伊藤ふじ子)、山崎一、山本龍二(以上は特高刑事)の6人、
初演の時、多喜二を井上芳雄と聞いて、なんだかイメージが違うなと思ったのが失敗だ。井上芳雄の演技は想像以上に素晴らしかった。脱帽。石原さとみも、高畑敦子も、神野三鈴もお見事の一言。そして何よりも特高刑事の山崎一と山本龍二、2人の名演技には感銘を受けた。
熱烈なスタンディング・オベーションで、俳優たちは、なんと4度も舞台に戻ってきた。
そして、そして、小曽根真のピアノ演奏には鳥肌が立った。震撼。
資本主義、天皇制、そして戦争を批判し続けた多喜二の地下生活を描いた『組曲虐殺』は、文字通り2012年12月の東京にふさわしい演劇となっていることを、喜べばいいのか、悲しめばいいのか。
多喜二については、すでに「非国民がやってきた!」シリーズで12回書いた。
武井昭夫さんが、井上ひさしの戯曲をほとんど全否定するかのように批判していたのを思い出した。武井さんは2010年に亡くなったが、『組曲虐殺』を観たのだろうか。たぶん観ていないだろう。
武井昭夫
2012年の時代精神を批判しぬくのに、小林多喜二と井上ひさしは今なお先進性を持っている。武井さんほどの評論家でも、筋を読み違えることがあるのだ、と痛感した。
東京裁判3部作を書き、ヒロシマを取り上げた『父と暮らせば』を仕上げ、多喜二を描いた『組曲虐殺』を経て、井上ひさしは次にオキナワを描く予定だったが、果たせずに旅だった。
その原案をもとに、2013年、『木の上の軍隊』が上演されるという。必見だ。
http://www.komatsuza.co.jp/contents/performance/index2.html