Thursday, March 14, 2013

私たちは星屑でつくられている

村山斉『宇宙になぜ我々が存在するのか――最新素粒子論入門』(ブルーバックス、2013年)                                                         *                                                                                         同じブルーバックスの前著『宇宙は本当に一つなのか』に続く著者の、一般向けの入門解説書だ。                                                                                            極大の137億年前に成立した宇宙と、極小極微の素粒子論の最新物理学で解く宇宙と私というコンセプトで、主役はニュートリノ、だ。第1章「恥ずかしがり屋もニュートリノ」に始まり、「素粒子の世界」「とても不思議なニュートリノの世界」「ものすごく軽いニュートリノの謎」「ニュートリノはいたずらっ子?」「ヒッグズ粒子の正体」を経て、第7章「宇宙になぜ我々が存在するのか」に至る。一昔前に読んだ宇宙論や素粒子論から随分と飛躍的に理解が進んでいるので驚きが多い。                                                                                               2012年に「神の粒子」ヒッグズ粒子が発見された時のニュースの意味も本書でよくわかった。この分野ではカミオカンデと並んで有名なCERNの大型加速器LHCがヒッグズ粒子を発見したが、ジュネーヴの北にあるのですぐそこだ。ジュネーヴ郊外、ジュネーヴ空港の向こう側の地下にある。本書113頁に上空から見た写真が掲載されているが、いつも歩いている道、というか本書を読んでいるさなかの3月13日にも歩いた道が、ちゃんと写っている。北側にあるジュラ山脈もいつも来ている山々だ。                                                                                                               著者は1964年生まれの素粒子物理学者、以前はカリフォルニア大学バークレー教授だったが、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構招堤機構長、特任教授。いろんな喩話を用いて、難しい素粒子論を素人でも理解できるように分かりやすく話すのが得意だ。ただ、たとえ話をいくら読んでも本当のことはわからない。しかし、こちらに本当の理論を理解する能力がないので、著者の喩話を楽しく読むしかない。