Monday, March 04, 2013
人権理事会、ヘイト・スピーチ、拷問の審議
グランサコネ通信2013-10
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3月4日、人権理事会第22会期は、議題3において提出された報告書(人権高等弁務官、特別報告者)をめぐる議論を行った。
人権高等弁務官報告書で興味深いのは、人種差別煽動禁止に関するセミナー報告書であった。昨年10月にラバト(モロッコ)で専門家会議が行われた。それ以前にもウィーン、バンコク、ナイロビ、サンティアゴで開催されてきたというが、ラバト・セミナーの結果として「人種差別煽動禁止に関するラバト行動計画」をまとめている。4日午前はNGOの発言が続いたが、大半が特定の国(イスラエル、アフガンなど)の差別事件や差別政策の報告で、「煽動処罰」に絞った発言はほとんどなかった。
日本では、煽動処罰に対する反発が強く、憲法学も刑法学も、煽動処罰は罪刑法定主義に反する、という不思議な主張をする。ジェノサイド条約も国際刑事裁判所規程も人種差別撤廃条約も、煽動処罰を明示している。かなり多くの国に実際に煽動処罰規定があり、実際に適用されている。ところが、日本の法学者は、煽動処罰は人権侵害だ、と言い放つ。この問題はきちんと議論しなければならない。ラバト行動計画を後日、日本に紹介しよう。
「平和的抗議の文脈での人権促進保護」という報告書も提出されているが、4日午前の発言者はあまり触れなかった。報告書を読む余裕がなかったが、いくつかの諸国の法制度などの紹介が中心だ。デモの自由のテーマで、日本でもこのところ大いに話題になっているので、読んでおこう。
食糧の権利、家屋(住居)の権利、拷問、人権擁護者の権利の特別報告者の報告書の審議が続いた。食糧の権利の報告書は「女性の権利と食糧の権利」に焦点を当てていた。
メンデス拷問特別報告者の報告書は、今年は獄中医療に焦点を絞っている。再生産の権利の侵害とか、苦痛を取り除く医療の否定とか。さまざまな類型の調査が行われているので、これまでと同様、この報告書も後日「救援」紙上で紹介する予定だ。獄中医療は日本でもさまざまな問題を生じてきた。報告書をざっと見ると、多角的に論じているが、刑事施設における高齢者問題を取り上げていない。日本では刑事施設における高齢者と医療が大きな論点になるが、世界的には違うのだろうか。
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メンデス報告書の目次は次のようなものです。
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Ⅰ 序文
Ⅱ 特別報告者の活動
A 今後の国家訪問(調査)及び保留となっている件
B キー・プレゼンテーションと協議の焦点
Ⅲ 拷問及び虐待の保護枠組みを医療に適用すること
A 拷問及び虐待の定義の解釈問題
B 拷問及び虐待枠組みの医療への適用
C 解釈指針となる諸原則
Ⅳ 医療における多様な形態の虐待の認定
A 医療条件にとっての強制拘禁
B リプロダクティヴ・ライツの侵害
C 苦痛治療の否定
D 精神障害をもった人
E 周縁化された集団
Ⅴ 結論と勧告
A 拷問及び虐待としての医療における虐待を概念化する意味
B 勧告