Tuesday, November 19, 2013
フリブール美術館散歩
フリブール美術館のお目当てはマルセロだ。数年前に見学した時に、えっ、知らなかった、こんなアーティストがいたのか、と思わされたからだ。たまたま観た美術館で、たまたま出会ったアーティストだが、今回はマルセロ目当てで行ってきた。フリブール美術館は、旧市街のはずれにある。市役所前広場や聖ニコラ大聖堂からも徒歩2分だ。フリブールは、フランス語圏とドイツ語圏の境にある町で、多くの市民がバイリンガルだ。フリブールというのはフランス名で、ドイツ語ではフライブルクだ。美術館は正式にはフリブール美術歴史博物館という。歴史とつくのは12~15世紀の地元の絵画と彫刻が多数あるからだ。多くが宗教画・彫刻で、聖母マリアや、キリスト、預言者たちを描いている。15~17世紀のステンドグラスも楽しい。啓蒙時代頃の衣類、家具、食器、宝飾品なども展示されている。近代絵画もホドラーやピカソが数点あるほか、地元の画家の作品をそろえているが、なんといっても、マルセロだ。マルセロの本名はアデレ・ダフリーAdele d’Affry, Duchess de Castiglione Colonna。1836年にフリブールで生まれ、南フランスで育ち、ローマで彫刻家ハインリヒ・マックス・イムホフに彫刻を学び、19歳でカルロ・コロナと結婚したが、夫は数か月後に死んでしまう。新しい人生をパリに求めたアデレは、男性の名前マルセロMarcelloを名乗り、絵画と彫刻の世界で活躍した。ローマ時代からミケランジェロ作品に学び、力強い人物像を作り続けた。1863年からパリのサロンで定期的に個展を開いて彫刻家として認められた。フリブール美術館所蔵作品もこの時代の大理石像が中心である。代表作と言えば、パリのガルニエ・オペラ座にある<Pythia>だそうだ。このブロンズ像の実物を見たことがないが、フリブール美術館にはレプリカが置いてある。病気のため1879年没。43歳の若さだ。フリブール美術館のカタログとは別に、以前、「マルセロ展」が開催された時のカタログも買ってきたが、フランス語版のみ。カタログの表紙も<Pythia>だ。だが、なぜか展示されている絵画や、主要な大理石像がカタログに収録されていない。と思ってみると、美術館のカタログに収録されたマルセロ作品の番号はMAHF2006-97といった表記になっている。MAHFはフリブール美術歴史博物館の略なので、おそらく、2006年に所蔵となったものだろう。美術館には、エドゥアル・ブランシャルが油彩で描いたマルセロ像、ジョルジュ・クレランが油彩で描いた「アトリエのマルセロ」も展示されている。