Wednesday, November 27, 2013

論壇の崩壊を跡付ける

山崎行太郎『保守論壇亡国論』(K&Kプレス)――冷戦崩壊後、左翼論壇が自滅し、右翼論壇が跳梁跋扈したように見える。だが、左翼が自滅したとすれば、右翼には存在意義がなくなるので、右翼論壇も自壊するしかない。危機に直面した右翼論壇は、左翼なき後の「サヨク」を猛烈に攻撃し、リベラルや個人主義や民主主義まで攻撃対象にしていった。他方、ネット右翼は「在日特権」を捏造して攻撃している。かくして、右翼論壇も思想的頽廃を露呈する。著者は、中国を批判し、靖国に参拝すれば、それで「保守」と言えるのか、「保守論壇」の思想的劣化により、政治家と、日本の劣化が始まった、と見る。右翼論壇の第一世代を小林秀雄、福田恒存、江藤淳、三島由紀夫、永井陽之助などの系譜に求める著者は、第一世代が左翼論壇と正面から格闘し、議論したがゆえに、その知性を保ちえたのに対して、現在の第二世代の右翼論壇は対決すべき左翼不在のままに盛況を呈したがために、論理が飛躍し、事実を捏造し、幼稚な議論を展開する結果に陥ったと見る。その典型例として、渡部昇一、西部邁、櫻井よしこ、中西輝政、小林よしのり、西尾幹二などを取り上げて、厳しく批判する。かくして保守論壇は自壊し、亡国の論理に陥った。つまり、論壇そのものが全体として劣化し、混迷していることになる。福田恒存が述べたように、もともと、保守とは「態度」であり、「主義」ではないにもかかわらず、「保守主義」というイデオロギーに無自覚に染まっている。小林秀雄、江藤淳の影響を強く受けた著者らしく、2人の文章が良く引用される。福田恒存の影響はそう大きくはないようだ。私は小林、江藤は苦手で、福田だけは良く読んだものだが。また、本書では三島由紀夫はメインではないが、著者には『小説三島由紀夫事件』という著書があるという。さらに、現在「柄谷行人論」を執筆中。