Saturday, November 02, 2013
ルネサンス3巨匠の交錯のドラマ
池上英洋『ルネサンス 三巨匠の物語』(光文社新書)----1504年のフィレンツェ、1516年のローマ、レオナルド(万能)、ミケランジェロ(巨人)、ラファエッロ(天才)の3人が2度にわたって同じ町にいた時期を取り上げて、彼らの交錯を描きながら、それぞれの個性を浮かび上がらせる。絵画、彫刻はもとより、建築に至る幅広い分野での傑出した才能のぶつかりあいだ。前著『ルネサンス 歴史と芸術の物語』では社会構造の面からルネサンスをとらえたが、本書では芸術家たちの人間的なドラマに焦点を当てている。一部はフィクションも含みつつ、歴史小説の手法も採用して物語を展開し、その次の美術史的な解説を施すスタイルをとっている。3巨匠の年齢の違い、社会的評価の違い、収入の差異、「世紀の対決」など、読みどころ満載だ。「ジョコンダ(モナリザ)」、「最後の晩餐」、「最後の審判」、「サン・ピエトロのピエタ」、「ダヴィデ」、「三美神」、サン・ピエトロ大聖堂。圧倒的な美とスケールだ。メディチのフィレンツェの繁栄と没落。ローマ教皇の個性と死と。そして、プロテスタントの登場によるルネサンスの終わり。同時に大航海時代の始まりによる地中海時代――イタリアの時代の終わり。そこに至るまでの時代背景も読み取れるようになっている。それにしても著者は新書の達人だ。『恋する西洋美術史』『イタリア 24の都市の物語』『ルネサンス 歴史と芸術の物語』『西洋美術史入門』と、手を変え品を変えて読者を愉しませる。しかも、今春、『神のごときミケランジェロ』を出版したばかりなのに、夏には本書を送り出している。
http://maeda-akira.blogspot.ch/2013/08/blog-post_23.html