Tuesday, November 05, 2013
アールブリュット美術館散歩
ローザンヌのアールブリュット・コレクションCollection de l’Art Brutは、展示作品が結構変わっていた。以前見たのがいつか日も覚えてないが、10数年前だ。見た作品をきちんと覚えているわけではないが、今回始めて見るものがいくつかあった。21世紀になってからの作品も結構展示されていた。販売されているカタログも、2012年出版のものだ。前回は購入しなかったので比較できないが、今回買ったカタログは大きなカラー図版が充実した170頁のしっかりしたカタログだ。アールブリュットにはいろんな定義があるようだ。「メインストリームの外で制作された美術作品」、「正規の美術教育を受けずに自分で学んで制作するようになったアーティストによる作品」ともいう。「孤独のうちに制作された作品、人に知られることなく、静かに、そして社会的評価から忘れられて制作された作品」とも書かれている。パンフには「病院の患者、刑務所収容者、奇人変人、一匹狼、アウトカースト」が例に挙げられているが、「正規の美術教育を受けて一匹狼」になるアーティストはいくらでもいるだろう。「正規の美術教育を受けてメインストリームで活躍したかったのに、認められず忘れられたアーティスト」のほうが多いかもしれない。「アウトサイダーアート」とアールブリュットの異同もよくわからないが、定義を詮索することに意味があるわけではない。受付脇の本棚に多数の関連書籍が置いてあった。日本語でも、つい先年、各地を巡回したアールブリュット展のカタログ(『アール・ブリュット・ジャポネ』現代企画室)が置いてあった。他方、日本では死刑囚の美術・文学作品の展示や出版も続いている。アールブリュット美術館、実際の展示では、古いものでも、Ataa Oko、Henry Darger、Helga Goetzeなど、特に有名な作品は展示されていた。カタログ掲載作品の半分くらいは実際に展示されていた。展示されていてもカタログには載っていないものも結構あった。日本人では3人の作品があったがカタログにはなく、カタログに出ているのは実際には展示されていなかった。カタログには、岡山出身のMasao Obata(1943~2010年、カードボードに色鉛筆の作品)と、滋賀出身のShinichi Sawada(1982年~、粘土とエナメルの人形作品)の作品が載っている。アールブリュット美術館はローザンヌの町中にあるが、普通の一軒家を改造した美術館だ。収蔵庫を持っているようには見えないので、収集した作品群をどうしているのだろう。保管が大変なのではないかと思う。