Thursday, April 10, 2014
強制とは何か(3)河内謙策さんへの質問
今回は奴隷の禁止です。1926年の奴隷条約は「奴隷の禁止」と「奴隷取引の禁止」を掲げています(第2条)。奴隷の定義は第1条に示されています。
第1条 この条約の適用上、次の定義に同意する。
1 奴隷制度とは、その者に対して所有権に伴う一部又は全部の権能が行使される個人の地位又は状態をいう。
2 奴隷取引とは、その者を奴隷の状態に置く意思をもって行う個人の捕捉、取得又は処分に関係するあらゆる行為、その者を売り又は交換するために行う奴隷の取得に関係するあらゆる行為、売られ又は交換されるために取得された奴隷を売り又は交換することによって処分するあらゆる行為並びに、一般に、奴隷を取り引きし又は輸送するすべての行為を含む。
日本政府は奴隷条約を批准していないため、公定訳がありません。ここでは『国際人権条約・宣言集[第3版]』(東信堂)の訳文に従います。
日本政府が批准していないため、「慰安婦」問題に関して奴隷条約違反ということは言えません。
しかし、奴隷の禁止と奴隷取引の禁止は1930年代には慣習国際法の地位を獲得していたとされています。条約を批准していなくても、守らなければならないとされています。
それゆえ、「慰安婦」問題で強制の有無を問う場合に、奴隷の禁止と奴隷取引の禁止に関する奴隷条約の定義をもとに判断することになります。
ラディカ・クマラスワミ・国連人権委員会の「女性に対する暴力特別報告者」の1996年報告書は、「慰安婦」は奴隷に当たり、日本政府は奴隷の禁止に違反した、と結論づけました。私たちの翻訳を参照してください。クマラスワミ『女性に対する暴力』(明石書店、2000年)。
ゲイ・マクドゥーガル・国連人権委員会差別防止少数者保護小委員会の「戦時性奴隷制特別報告者」の1998年及び2000年報告書も、「慰安婦」は奴隷に当たり、日本政府は奴隷の禁止に違反した、と結論づけました。私たちの翻訳を参照してください。VAWW-NET Japan(バウネット ジャパン)編訳『戦時・性暴力をどう裁くか 国連マクドゥーガル報告全訳』(凱旋社、1998年[増補版2000年])
なお、1998年当時、日本政府は「1930年代、奴隷取引の禁止は慣習国際法だったが、奴隷の禁止は慣習国際法ではなかった。だから奴隷の禁止に拘束されない」という驚くべき主張をしていました。
なお、「慰安婦」訴訟における山口地裁下関支部判決も「慰安婦」が奴隷状態に置かれていたと認定しています。
河内さんへの質問です。
(1)「慰安婦」連行は奴隷の定義に文字通り当たるのではありませんか。
(2)奴隷の禁止は1930年代に慣習国際法だったのではありませんか。
(3)それとも、朝鮮人は奴隷にしても構わないとお考えでしょうか。