Thursday, October 29, 2015

「奇妙なナショナリズム」研究に学ぶ(8)

五野井郁夫「日本の保守主義――その思想と系譜」山崎望編『奇妙なナショナリズムの時代』

五野井は『「デモ」とは何か――変貌する直接民主主義』の著者であり、ヘイト・デモに対するカウンターの現場にも立った研究者である。
本論文ではうって変って、日本の保守主義思想の歴史的分析を行っている。40ページほどの論文であるにも関わらず、明治から現在までの保守主義の特質を描き、保守主義の論じられ方を追跡している。その意味では「奇妙なナショナリズム」研究ではなく、「奇妙なナショナリズムの時代」の保守主義研究である。1980年代以後の「保守主義なき保守」の暴走の分析が優れている。
「本物の保守主義」がないことが日本の限界であり、排外主義とヘイト・スピーチを推進力とする極右が政権をのっとる笑えない悲劇が現実化していることが良く見えてくる。