Thursday, January 21, 2016

植民地支配と文化財の略奪

『韓国の失われた文化財』(三一書房)
黃壽永:編/国外所在文化財財団:企画
李洋秀・李素玲:日本語訳/荒井信一:監修
日本による侵略・植民地支配の時期に韓国から失われた文化財の調査記録である。韓国で出された『日帝期文化財被害資料』(1973年)の増補改訂版。韓国の調査のため、朝鮮半島南部が中心だが、ピョンヤンは金剛山も含まれる。

略奪文化財について、旧宗主国側は「市場で購入した」「正当な商取引である」といった弁解をする。しかし、嘘と言った方が良い。植民地支配の下で、強権的に買い取りを強要する。市場に出るはずのない性質のものを無理やり売りに出させる。泣く泣く安値で売らされ、手放さざるをえないようにする。その結果、植民地から大量の文化財が失われる。世界中で起きたことだが、日本の植民地でも同じことが起きた。その調査が本書である。美術館、図書館は必ず備え付けるべき本だろう。