黒川みどり『近代部落史――明治から現代まで』(平凡社新書)
重要な本を今頃になって読んだ。新書だが、部落問題の基本を教えてくれる好著だ。著者歴史学専攻の静岡大学教授で、著書に『異化と同化の間――被差別部落認識の軌跡』、『共同性の復権』、『地域史のなかの部落問題』があり、最近の共著に『差別の日本近現代史』がある。
明治維新期に近代国家の成立に伴って身分が再編されて以来、開化は四民平等と言いながら、被差別部落の排除が始まった。「家」制度、帝国の時代の人種主義、水平社の設立に対する「融和」事業、そして戦後の部落解放運動へ。250頁の内、191頁以後が戦後の記述である。つまり、戦前の記述が多く、戦後についてはあっさり触れているに過ぎない。その点はやや不満が残るが、戦前戦後を通じて近現代日本における部落差別の「論理」を抉り出すには、本書のような試みが有益なのだろう。
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差別の日本通史への挑戦
黒川みどり・藤野豊『差別の日本近現代史――包摂と排除のはざまで』(岩波書店、2015年)