Sunday, October 14, 2012

栗原弘行『尖閣諸島売ります』


栗原弘行『尖閣諸島売ります』(廣済堂出版)

http://www.kosaido-pub.co.jp/book/post_1825.html

 

<国境の島はどうなるのか?売却の経緯に関わってきた地権者実弟が初めて明かす、尖閣諸島問題の真実!>

<なぜ栗原家が尖閣諸島の所有者なのか / 石原慎太郎と大平正芳首相 / これまで尖閣諸島を売らなかった理由 売却の経緯に関わってきた地権者実弟が初めて明かす、尖閣諸島問題の真実!>

 

すでに国有化が済んだので、元・地権者の弟による著作ということになる。地権者・栗原起に代わってメディア対応をしていたのが著者である。

 

領土問題という点では、何も新しい情報は書かれていない。

 

尖閣で事業を営んだ古賀辰四郎から継いだ息子の古賀善次と花子から、なぜ尖閣諸島が栗原家に相続されたのか、本当の詳細は著者も知らないということだが、栗原家とはどのような一族なのか、尖閣所有に伴う苦労や思い出、尖閣を打ってほしいと言ってきた政治家のエピソードなどが語られる。すでにメディアに紹介された話もあるが、他方で、メディアで面白おかしく語られたことに誤りがあるともいう。

 

なぜ最初は東京都だったのかも、石原慎太郎都知事との関係だけではなく、東京都が島嶼管理のノウハウをもっていることなど、丁寧に説明されている。島嶼開発を行えば尖閣に可能性があるという。ただ、むやみな開発をせずに、自然キャンプ場などの利用をすることを提案している。

 

地権者だけあって、尖閣への思いはしっかりしている。参考文献に、きちんと尖閣諸島文献資料編纂会の研究と資料があげられている。著者は、文中でもこの資料から引用している。領土問題を議論する学者や評論家には、この資料を見ないであれこれ論じている者が多い。ちゃんと勉強しているのはごくごくわずかである。領土問題についてどのような立場をとるかに関わらず、必見文献である。