10月5日の朝日新聞夕刊第2面「窓」欄に、「政治家ミシュラン」という記事(署名:星浩)が掲載された。贅沢料理のミシュランには興味ないが、地元の高尾山の豊かな自然が取り上げられたことだけは歓迎しつつ、この記事を読んだ。
自民党総裁選で苗字だけは主権者の記憶に残ったかもしれない林芳正議員のアイデアとして「政治家ミシュラン」だそうだ。経済・財政、社会保障などの内政と、安全保障などの政策立案力を採点するのだという。
その団体として期待されているのが「政治を学び合う」講座だという。東京、早稲田、慶応の3大学が協力して設立された講座だという。この団体が政治家ミシュランと同様の構想を持っているらしい。
記事には、講座の世話役の早稲田大学教授の「世間で思われているより政治家は政策の勉強をしているが、実態が伝えられていない。この講座はネットも活用し、政治家の実像を伝えることで政治の質向上に役立ちたい」という噴飯もののコメントが載っている。
いったい何を専門とする教授か知らないが、これはないだろう。
政治家は政策が本領であり、生きがいであり、すべてである。自分の政策を有権者に伝えるのは、政治家自身の仕事であり、当たり前のことであり、それができないのは完璧に無能ということでしかない。
初めて選挙に挑戦する新人で、地盤・看板・カバンの3バンを持っていない若手政治家なら、まだ実態が知られていないから、サポートすることに意味はあるかもしれない。だが、そんな政治家はごくごくまれにしか出馬しない。普通は小泉3世議員のように、ひたすら、首相だった父親の七光りだけで選挙に出ている。
おまけに、林芳正が「トップバッター」として立つのだそうだ。自民党総裁選に立候補した人物が、その政策について実態が伝えられていないのだという。いったいこれまで何をしてきたのか。
政治家の多くは、一般庶民と比較すれば多額の財産を有している。そのお金を使って広報・宣伝することはふんだんにできたはずだ。
政治家の多くは、一般庶民と比較すればはるかに多くメディアに登場して、自分の主張を聞いてもらうチャンスがある。そのチャンスを利用して広報・宣伝することも十分できたはずだ。
政治家の多くは、選挙公報でも、税金を使って自分の宣伝をできたはずだ。
それだけやっても、政策を伝えられなかったのは、政策など勉強していなかったか、それとも、政策だけ勉強して実は無能であったか、どちらかでしかない。
しかも、かつて小泉純一郎首相が吐き捨てたように、政治家は「公約違反など大したことではない」と考えている。その通り、民主党もマニフェストをことごとく投げ捨てた。野田という犯罪的人物を生み出したのは、無能で無責任な民主党議員全体の責任である。
政治家が政策を勉強しているが実態が伝えられていないなどという一般論は、明らかな嘘である。勉強している政治家もいるが、ろくに勉強していない政治家もいる、というだけのことである。
きちんと勉強して、それを伝える努力を着実に続けている政治家もいるのだ。
朝日新聞記事がいう「政治家ミシュラン」なるものは、いったいどのような政治家の宣伝をするものなのか。不勉強な政治家の提灯持ちにすぎない政治家ミシュランなど、百害あって一利なし、である。