新年は伊勢志摩で骨休め。
今年のBGM1曲目は、クック諸島のPeka Beniamina, Akaperepere、歌はTeata Nga。2曲目は、Piritau Nga, E Reo Iku. 歌はTara Kauvai。南太平洋サウンドで、女性ヴォーカルのメロディアスな歌だが、時折ジャズの影響が前面に。
正月休みのまとめ読みの第1冊は、白取祐司『刑事訴訟法の理論と実践』(日本評論社)
著者は、北海道大学大学院法学研究科教授。最初の著書は『一事不再理の研究』。その後も多数の著書を送り出してきたが、なんといっても刑事訴訟法教科書としてもっとも信頼され、定評のある『刑事訴訟法』(日本評論社)は、2012年に第7版を数えた。また、研究書『フランスの刑事司法』(日本評論社、2011年)を出したばかりで、今回は論文集だ。
本書は、著者がその都度書いてきた論考を収録し、捜査から救済手続きに至る刑事裁判の流れに即してまとめたものだ。「理論と実践」とあるように、研究者の理論・学説の役割を問うことが強い問題意識となっている。
というのも、刑事裁判実務は、実際には検察支配が貫かれてきたし、まして捜査実務に関しては検察さえも「警察の犬」「犬の犬」と自嘲するほど、警察権力の思いのままでやってきた。刑事訴訟法学者の理論は、時期によっては大きな影響を与えたこともあるが、戦後の実務が確立して以後は、学説は軽視されてきた。
このため、有力な刑事訴訟学者の中には、理論を断念して実務に追随し、実務の理論化に力を注ぐものが登場し、一部には「実務を理論化することこそ学説の役割だ」という、学者の自己否定、主体的責任放棄が堂々と語られる状況になった。
裁判実務だけではなく、21世紀に入って続々と続いた刑事立法でも、学説による批判や、検証は最初から無視され、実務と世論の暴走が始まった(重罰化、裁判員制度、それまで違法だった捜査手法の正当化など)。「警察の犬」は検察だけではない。
こうした現実を前に、著者はさまざまな論点について、学説と実務の関係をとらえ返し、理論の果たすべき役割を思索し続けてきた。その基本線は教科書において示されているが、本書では、そのなかのいくつかに絞って、より詳しい叙述がなされている。
巻頭論文「刑事訴訟法における実務と学説」、続く「刑事訴訟法と法改正」「モデル論と精密司法論」のほか、個人的には、「起訴前勾留と起訴後の勾留」「未決拘禁制度の基本問題」「弁護権論の到達点」「自由心証主義の反省」「情況証拠による事実認定」が特に勉強になった。
思い起こすと、著者と初めて会ったのは、刑法理論研究会の場だったと思う。刑法理論研究会『現代刑法学原論』(三省堂、1983年)の初版が出た直後に、佐々木光明(現・神戸学院大学教授)と2人で、その書評を書いたのは、もう30年前のことになる。若気の至りで、批判的な論評を連ねたものだ。その直後の刑法学会は関西学院大学で開催だっただろうか。それ以来、刑法理論研究会、刑法学会、民主主義科学者協会法律部会などでお目にかかるたびに貴重なご教示をいただいてきた。