大島堅一『原発はやっぱり割に合わない』(東洋経済新報社)
<原発は安価な電力ではない。気鋭の経済学者が、発電、財政、賠償、廃棄物にわたるそのカラクリを経済性の視点で解き明かしながら、再生可能エネルギー移行へのシナリオを描き出す。>
「原発の危険性」とともに/よりも、「原発の経済性」を主題とした著作だ。論述が丁寧で、読みやすく、わかりやすい。ただし、難解な経済学の部分は省略してある。それは著者の別の専門書を読めばわかることだが。
著者は福井県出身で、子どものころから原発は身近だったが、チュルノブイリ以後に環境経済学を学び、専攻し、生涯のテーマとして原発問題を追いかけてきた。高木仁三郎や室田武に学び、再生可能エネルギー政策について論じ、2010年3月11日、つまり3.11の1年前に『再生可能エネルギーの政治経済学――エネルギー政策のグリーン改革に向けて』を出版している。
原発の安全神話や安価神話は、すでに崩壊した。崩壊させたのは福島原発事故だが、神話の崩壊を理論的に引き起こし、確実なものにさせたのは著者の功績である。
『原発のコスト――エネルギー転換への視点』(岩波新書)や『原発事故の被害と補償――フクシマと「人間の復興」』(共著、大月書店)とともに、大いに読まれるべき本だ。
目次
第1章 世界史的事件としての福島原発事故
第2章 なぜ日本は原発大国になったのか
第3章 「原発が最も安い電力」というからくり
第4章 原発の本当のコスト
第5章 使用後の核燃料をどうするか
第6章 日本のエネルギーのこれから
著者
立命館大学国際関係学部教授。福井県生まれ。経済学博士(一橋大学)。専門は環境経済学、環境・エネルギー政策論。 2011年の福島第一原子力発電所事故後、経済産業省総合資源エネルギー調査会基本問題委員会委員、内閣官房国家戦略室エネルギー・環境会議コスト等検証委員会委員、同需給検証委員会委員などを務める。主な著書に、『再生可能エネルギーの政治経済学――エネルギー政策のグリーン改革に向けて』(東洋経済新報社、環境経済・政策学会奨励賞受賞)、『原発のコスト――エネルギー転換への視点』(岩波新書)、『原発事故の被害と補償――フクシマと「人間の復興」』(共著、大月書店)、『環境の政治経済学』(共著、ミネルヴァ書房)などがある。