Wednesday, January 23, 2013

長山靖生『バカに民主主義は無理なのか?』 

長山靖生『バカに民主主義は無理なのか?』                                 http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334037260                                                                                       歯科医にして文芸評論家。雑学大博士の著者である。『日本SF精神史』(河出ブックス)で、第31回日本SF大賞、第41回星雲賞も受賞している。出版した著作のタイトルだけ見ても、非常に幅が広い。                                                           本書も政治にかかわる雑学と言ってよいだろう。さまざまな著作に学び、いろんな引用をしているが、政治思想や立場の違いとかは関係なく、手当たり次第に活用している。著者自身の問題設定に使えるものを片っ端から使う姿勢である。見事な精神だ。                                 「力説することではないが、私は短慮については自信があり、根気がないことでも定評がある。そんな私でも、政治状況への不安と不信だけは、かなりのところ持続している」という著者は、日本の政治がおかしくなっていることを、様々な観点で論じているが、ポイントは、国民主権でありながら、国民が主権者としてきちんとしてこなかったことの反省である。政治家が悪いとか、政治制度が悪いとか、いろんな要因が絡んでいることは当然の前提としつつ、皮肉屋の著者は、「輝かしくない民主主義」の持続を唱える。                                                  「民主主義にいいところがあるとしたら、それはこの制度が、『われわれが生きている世の中は理想的ではない』ことがわかりやすいところだと思う。」