Friday, January 04, 2013

村上隆『創造力なき日本』


村上隆『創造力なき日本』(角川ONEテーマ21)


 

世界のムラカミが語るアートとビジネスで成功するためのノウハウ本。駅の売店で買って電車で読んだ。

 

はしがき冒頭から、「戦後民主主義の借り物の民主主義」「戦後の平和ボケした日本」といった批判が出て来るので笑えた。気に入らないことはすべて戦後民主主義のせいにする。前後の文脈はどうでもいい。そして、説明も補足も本文では一度も出てこない。よくあるパターンだ。

 

<技術力と集中力の劣化にどう立ち向かうか?><個性をはき違えた日本人の末路>といった記述もあまりにありきたりで平凡すぎる。

 

それはともかく、本文は、さすが世界のムラカミだけあって、現代美術でやっていくために必要なこと、なすべきことの指摘は納得。また、日本の絵画で世界の美術史に残るのは北斎の1点だけだと述べ、自分は将来の世界史に残る作品を1つでもつくるべく努力を積み重ねていると宣言している。はるか遠くまで視線を伸ばし、「死んでからが勝負」と言い切るところが凄い。

 

一方、覚悟、礼儀作法を強調するのは、わかるようで、わからない。まして、仁・義・礼こそ重要というのも、何をいまさらという感じも。

 

アートとビジネスの両方にまたがった論述になっているのは、村上自身が、個人ではなく、「有限会社キキカイキ」で共同作業をし、アートを「インダストリ」として位置付けているため。

 

アートで成功するための6つのパターンは、天才型、天然型、努力型、戦略型、偶然型、死後型だという。村上自身は努力型プラス戦略型で、今は死後型にもなるように力を注いでいるという。