朴秉植『死刑を止めた国・韓国』(インパクト出版会)
<隣の国・韓国では15年間死刑の執行がない。20数人が殺害された連続殺人事件が起きても死刑は再開されなかった。日本よりも自由な獄中処遇、殺人事件被害者への支援組織、出獄者への更生活動などを報告。日本が学ぶべきこと満載の書。>
著者は1984年から9年ほど日本の明治大学大学院に留学し、日本の死刑廃止運動情報を韓国に伝えた。現在は韓国の東国大学教授。
本書は「事実上の死刑廃止国」である韓国の死刑の歴史、執行の実態、事実上の廃止国となった経緯、憲法裁判所における存廃論(裁判所は5対4で、合憲論)などを紹介している。存廃論の議論状況は韓国も日本も同じだ。
廃止論がいくら論理を提示しても、感情論としての存置論には対抗できないこと。凶悪犯罪発生率の読み方が一面的で不当であること。世論調査の方法が非常に偏っていること。いずこも同じ。
また、韓国では何度か死刑廃止法案が国会に提出されたが、いずれも廃案となっている。途中から、当初はなかった代替刑としての終身刑の提案が盛り込まれた。やがて、死刑廃止法はできないが、重罰化のための絶対終身刑案が登場したという。日本と同じだ。著者は、「あまりにも、日本の動きと似ている。悪行を早く覚えるのは人間だけじゃない。国や政府も同じである」と言う。
驚いたのは、「国際刑事裁判所管轄犯罪の処罰などに関する法律」だ。国連は死刑廃止条約を採択しているので、国際刑事裁判所規程も死刑廃止である。ところが、韓国の法律はあえて死刑を盛り込んでいるという。
この点、日本は大きく異なる。日本政府は国際刑事裁判所規程に遅れて加入したが、それに伴う法改正は行っていないので、日本ではジェノサイドも人道に対する罪も犯罪ではない。この点では、日本と韓国は違い、両極端であり、しかもともに世界の水準からかけ離れている。
もう一つ、日本と違うのは死刑囚処遇だ。心情の安定のために刑務作業につくことが許されている。日本より人道的だ。
事実上の死刑廃止、及び死刑囚の人道的処遇など、日本はいま韓国に学ぶべきである。