Thursday, May 16, 2013

ヘイト・クライム禁止法(13)

ルーマニアが人種差別撤廃委員会に提出した第16~19回報告書によると(CERD/C/ROU/16-19. 22 June 2009.)、人種差別撤廃条約第4条に関連する立法は4つに分類できる。第1に刑法、第2にファシズム・シンボル禁止法、第3に「アウシュヴィッツの嘘」法、第4にオーディオ・ヴィジュアル法である。憲法第30・7条は、国民、人種、階級、宗教的憎悪の煽動と、差別の教唆は法律によって禁止されるとしている。 第1に、2006年の法律278号によって改正された刑法第317条は、差別の教唆を次のように定義している。人種、国籍、民族的出身、言語、宗教、ジェンダー、性的志向、意見、政治的関係、信念、財産、社会的出身、年齢、障害、慢性の非伝染病又はHIVを理由とする憎悪の教唆。差別の教唆は、6月以上3年以下の刑事施設収容又は罰金を課される。 第2に、ファシズム・シンボル法(2002年の緊急法律31号)は、ファシスト、人種主義者、外国人嫌悪の性質を持った組織とシンボル、平和に対する罪や人道に対する罪を犯した犯罪者を美化することを禁止した。2006年法律107号と同年法律278号によって一部修正されている。この法律第2条(a)によると、ファシスト、人種主義者、外国人嫌悪の組織とは、3人以上によって形成された集団で、一時的であれ恒常的であれ、ファシスト、人種主義者、外国人嫌悪のイデオロギー、思想又は主義、民族的、人種的、宗教的に動機付けられた憎悪と暴力、ある人種の優越性や他の人種の劣等性、反セミティズム、外国人嫌悪の教唆、憲法秩序又は民主的制度を変更するための暴力の使用、過激なナショナリズムを促進するものである。これには、組織、政党、政治運動体、結社、財団、企業、その他の法律団体で、前記の定義の要素に合致するものも含まれる。第2条(b)によると、ファシスト、人種主義者、外国人嫌悪のシンボルとは、旗、紋章、バッジ、制服、スローガン、公式・決まり文句の挨拶、その他のシンボルで、前記の定義で述べられた考え、思想及び主義を促進するものである。(「公式・決まり文句の挨拶」とは「ハイル・ヒトラー!」のようなものを指しているのであろう。)第3条によると、ファシスト、人種主義者、外国人嫌悪の組織の設立は、3年以上15年以下の刑事施設収容及び一定の権利停止である。組織への参加や支援も同じ刑罰が定められている。ファシスト・シンボルの配布、販売、その準備は、6月以上5年以下の刑事施設収容と一定の権利停止である。シンボルの公の場での利用も同じ刑罰である。公の場におけるプロパガンダ、行為、その他の手段による、平和に対する罪や人道に対する罪を犯した犯罪者の美化、ファシスト、人種主義者、外国人嫌悪のイデオロギーの促進は、3月以上3年以下の刑事施設収容及び一定の権利停止である。プロパガンダ概念は、新たな信奉者を説得し、魅了する意図をもって、考え、思想又は主義を組織的に広め又は正当化することである(第5条)。 ルーマニアには「アウシュヴィッツの嘘」法もあるが、これについては後日紹介する。