Thursday, May 30, 2013
侵略の定義について(10)
これまで第二次大戦後、国連における侵略の定義についてみてきた。今回から、第二次大戦前の議論を見て行くが、その際、重要なことの一つに国際法の法源とは何か、がある。一般の人は慣習国際法を理解していないことが多い。侵略についても、日本軍「慰安婦」問題における奴隷概念についても、人道に対する罪概念についても、それを理解するためには、慣習国際法を知る必要がある。ところが、法律について一知半解の知識を持った人ほど、例えば、刑法の議論で罪刑法定原則に関連して「慣習法の禁止」があることを持ちだして、慣習法は認められないかのごとく主張する例が良く見られる。たしかに、日本の刑法について考える場合は、日本は成文法主義をとっているので、慣習法による処罰は認められない。しかし、コモンローの場合には必ずしもそうは言えない。まして、国際法では慣習国際法こそが主要な法源である。以下は、『コンサイス法律学用語辞典』(三省堂、2003年)。
<慣習国際法――条約と並ぶ国際法の主要な法源。国際慣習法ともいう。一般に慣習国際法は大多数の国家が同じような状況において同様の行為(作為および不作為)を反復しているという意味での一般慣行と、当該行為が法的に要請されているという観念に基づいているという意味での法的確信(法的信念)を要件として成立するとされる。慣習国際法の規則は成立時期の特定や、不文法であるため規則の内容の確定が困難な場合もあるが、統一的立法機関を欠く国際社会では普遍的に適用する法として大きな役割を果たしている。>
第二次大戦前又は大戦時に侵略の定義が国際的に成立していたか否かは、条約などの成文法における定義があったか否かとともに、慣習国際法上の定義があると考えられていたか否かをも議論しておく必要がある。