Friday, June 14, 2013
ヘイト・クライム禁止法(26)
カタール政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/QAT/13-16. 13 September 2011)によると、条約4条に関して、1979年の印刷出版法47条は、社会に不和を引き起こしたり、信仰、人種、宗教の争いを引き起こしそうな出版を、6月以下の刑事施設収容又は3000カタール・リヤルの罰金で、禁止している。2004年の刑法256条は、啓示宗教を汚すこと、神や預言者(マホメット)を侮辱すること、宗教施設を破壊することを犯罪としている。(1)イスラム・シャリア法で保護された啓示宗教を汚すこと、(2)口頭、文書、画像、メッセージその他の手段で預言者を侮辱すること、(3)啓示宗教の宗教儀式などに用いられる建造物などを破壊すること、以上につき7月以下の刑事施設収容としている。刑法263条は、イスラム教に対する侮辱を詳細に定めている。報告書は、カタール法は、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教を差別していないとしている。宗教や預言者に対する侮辱の罪はイスラムだけでなく、キリスト教などにも成立する。報告書は以上のように述べているが、これらは条約4条の要求する人種差別煽動の禁止とは違って、実際はイスラム教の保護規定である。カタールには、独特のヘイト・クライム法があるが、条約2条にいう人種差別禁止法も、条約4条に合致したヘイト・クライム法もないようである。