Sunday, March 18, 2018

『刑罰制度改革の前に考えておくべきこと』(3)


本庄武・武内謙治編『刑罰制度改革の前に考えておくべきこと』(日本評論社)


本書第2部「非拘禁措置の改革課題」には次の3本が集録されている。

武内謙治「仮釈放――必要的仮釈放をめぐる議論を中心に」

正木祐史「保護観察――解明すべき理論的課題および処遇の視座」

葛野尋之「猶予制度――刑事司法の基本原則と刑事手続きの基本構造に適合した猶予制度のあり方」


有罪判決において刑事施設収容を命じる自由刑(日本では懲役と禁固が柱)にたいして、自由刑を前提としつつ、非拘禁措置として仮釈放、保護観察、猶予制度が存在する。法務大臣の諮問に始まった法制審議会少年法・刑事法部会において、少年年齢の引き下げ問題を口実に、刑罰制度改革が進められようとしており、仮釈放、保護観察、猶予制度にも議論が及んでいる。3本の論文はそれぞれについて、少年法・刑事法部会の議論を素材に、論点を抽出し、検討を加えている。
自由刑に関する論文と同様に、第1に、従来の刑法改正や監獄法改正を通じて明らかにされていた論点が、現在どのような形で問題となっているか。その後の状況変化を踏まえて、どのように論じ直されるべきか。第2に、憲法や国際人権法が予定している人権保障との関連で、刑事法はいかにあるべきか、どのような基本原則の下に構想されなければならないか。仮釈放、保護観察、猶予制度も、いずれもいかなる刑罰思想と刑罰観に立つのか、いかなる人権思想に立つのかによって制度設計に影響が生じる。このことを、3人の論者が的確に明らかにしている