Sunday, March 11, 2018

アベシンゾー症候群の診断


中野晃一『私物化される国家 支配と服従の日本政治』(角川新書)


あまりのひどさにもう見たくない日本政治だが、他人事ではないので見続けなければならない。変えなければならない。嘘と恫喝と汚職にまみれたというよりも、それ以外に何もないアベ政権の正体は前からわかっていたが、アベ政権にすり寄っておこぼれにあずかる政治家、御用(誤用)学者、御用ジャーナリストがあふれているため、異常な政権が延々と続く現状だ。

本書は、立憲デモクラシーの会などでも活躍する政治学者による日本政治分析だ。細かな点での評価は異なるところもあるが、基本的に頷けることばかりだ。「エア・ナショナリズムが立憲主義を壊す」という宣伝文句がついているように、アベのナショナリズムは「エア・ナショナリズム」と規定しているところも、なるほど。エア・ギターと同じ言葉使いだ。240ページの新書だが、悲劇と喜劇を一緒にした転落劇の日本を徹底的に検証している。

本書出版から1ヶ月で、ついに嘘つき捏造の佐川辞任事態となり、アベ政権は「すでに下降線に入っているということはありえる」という著者の判断の正しさも見えてきた。時機にかなった1冊だ。

最終章「リベラリズムは息を吹き返すか」では、2017年11月選挙後の時点で、リベラルの立ち直りをどう図るのか。著者自身の研究と実践も含めての、そして市民の課題を含めての、記述がなされている。具体的な展望までは示されていないものの、市民とともに、あきらめずに闘う姿勢が再確認されている。