20年ぶりのウィーンだ。欧州は7月中旬まで猛烈な暑さだったようで、パリで40度などというニュースも流れていたが、7月下旬で猛暑は収まったようで、過ごしやすい。
20年前はハプスブルク時代の王宮などの一日見学だったが、あまりよく覚えていない。
アルベルティーナ宮殿の美術館は、膨大な近代のデッサンや版画を所蔵している。企画展「モネからピカソまで」展をやっていたので、「いまさらモネからピカソでもないよな」と思いつつ、入ってみた。実際には4種類の展示を見ることができた。
第1に、モネからピカソ。印象派、表現主義、青騎士、シュルレアリズムなど19~20世紀西洋美術史をざっと見せてくれる。印象派はモネとシスレー。「青騎士」でくくった中にパウル・クレーも数点あったが、青騎士時代ではなく、ずっと後の作品だ。ちょっと話が違う。こういうところが目立ったが、やむを得ないか。よかったのはジョレンスキー、ココシュカ、ノルデなどが結構まとめてみられたところか。
第2にシーン・スカリー展。アイルランド出身のアメリカの画家だが、近年はずっとカリブの島に通って、砂浜で遊ぶ自分の子どもを素材として描き続けている。最初の子どもは交通事故で死んだようで、次の子どもを大切に育て、描いている。赤、青、緑、橙などの原色を大胆に使った単純な構図の作品で、同じテーマばかりなので、違いもわからなくなってしまう。子どもを囲むラインを必ず描いているのは、外に飛び出して交通事故に遭わないようにという親の思いだろうか。
第3にヘルマン・ニッチュ展。アクション・ペインティングやパフォーマンス・アートの先達だが、作品を実際に見たのは初めてだ。横浜トリエンナーレにも出たようだ。ミステルバッハにヘルマン・ニッチュ美術館もできたそうだ。もっとも、作品はつまらなかった。100点くらいはあったが、同じ事の繰り返し。キャンバスにバケツで絵の具をまき散らし、手で絵の具を塗りたくる。歩き回って足跡をつける。あるいは、キャンパスの上を絵の具を流して、雨だれ状態の筋をたくさん作る。こうした作品ばかり。たいていは、青一色、赤一色、黒一色だが、一時期、多彩にした次期がある。作品制作状況ビデオも流していたが、なるほど、あの調子なら200x200や、200x300の作品を一日に何枚も制作できる。多作なわけだ。1960年代には目新しく、チャレンジングな作風だったのだろう。音楽、ダンスを組み合わせ、参加者を募ってキャンバスの上を転げ回り、歩きまわる。今でも、子ども野遊びとアートを兼ねて継承されている。でも、100枚見るのはただの苦痛でしかない。10枚で十分だ。
第4に常設の書籍・印刷展だ。印刷の発展過程を示す、古書が多数展示されていた。デューラー、ルーベンス、ブリューゲル、そして新しくはエゴン・シーレのデッサンも。これが一番の見所だった。