佐高信『反-憲法改正論』(角川新書)
2013年に光文社から出た『この人たちの日本国憲法』を大幅に加筆したもので、そちらも読んだはずだが、アベ改憲の危機に直面している状況に変わりがないので、本書も大いに読まれるべきだ。
「いわゆる革新派だけが護憲を叫んできたのではない」という著者は、元首相の宮澤喜一、元法相の後藤田正晴、元官房長官の野中広務を取り上げる。いずれも自民党の政治家だが、アベ流の改憲にはもちろん反対である。戦争体験や、政治家としての経験を踏んで、彼らは護憲を唱えてきた。こうした骨のある政治家がいなくなった自民党こそ問題である。
澤地久枝、井上ひさし、城山三郎、吉永小百合は、誰もが直ちに、そうだね、護憲派だね、と理解するだろうが、佐橋滋、三國連太郎、美輪明宏、宮崎駿、中村哲と並べられると、ああ、この人達も護憲派なんだと、ほっとするのではないだろうか。
著者の巧みなところは、憲法論を展開するのではなく、それぞれの人物のエピソードを紹介しながら話を進めるところだ。そのエピソードが実にはまっている。はまっていないように見える話もあるが、実はよく読むと、なるほどと納得させられる。単にこんなエピソードがありますよと言うのではない。いまこの時に、護憲派のために、このエピソードを知って、読者はさらに深めよ、と言っている。著者らしい力のこもった新書だ。
Apologia Sion 2018.