8月6日、国連欧州本部の会議室で人種差別撤廃委員会CERD99会期におけるポーランド報告書の審査が始まった。いつもは人権高等弁務官事務所ビルの会議室で開かれるが、今回は国連欧州本部・旧館の本会議場の上階にある会議室だ。
ポーランド政府がCERDに提出した報告書(CERD/C/POL/22-24. 22 August 2018)
2012年10月29日、検事総長は、私人訴追による事件への検察官関与についてのガイドラインを発した。インターネットにおけるヘイト・スピーチ事件(差別等の理由による中傷・侮辱事件等)の訴追に関するガイドラインで、検察官訴追事案ではなく、私人訴追事案についてのものである。犯罪が電話やインターネットで行われた場合、被害者が実行者の個人情報を特定することが困難である。こうした事案では、私人訴追が成された際に実行者の個人情報を被害者に開示するか否か、検察官は公共の利害を判断するよう求められる。
2014年10月27日、検事総長はインターネットを通じてなされたヘイト・スピーチに関して検察官ガイドラインに署名した。これには証拠保全・記録、NGOを含む諸機関との協力、非刑罰的措置に関する事項が含まれる。
インターネットにおけるヘイト・クライムと闘う場合、手続きの効果的運用に制約がある。例えば、外国に登録した企業所有のウエブサイトを通じてなされた憎悪扇動犯罪の訴追には法的援助が求められる。当該ウエブサイトが閉鎖され、別のアドレスで再開している場合も困難がある。
2016年12月1日、警察庁サイバークライム対策部局が設置された。ソーシャルメディア、ウエブフォーラム、ウエブサービス等の監視を行う。刑法に定められたヘイト・スピーチ犯罪を発見した場合、責任者の個人応報を確認する予備捜査が行われる。続いて当該情報が管轄警察部局に送付される。認知部局の24時間サービス局を配置し、ユーザーがインターネットで不適切情報を通報できるようにした。
2014年10月1日、警察庁と警視庁はサイバークライム対策特別局を設置し、ヘイト・クライムを検知するためのインターネット監視を行っている。
2017年8月31日の決定により。サイバークライム対策部局に担当責任者が任命された。2017年9月28日以来、担当責任者が職務を遂行している。
刑法119条、190条、255条、256条i、257条に該当する犯罪の内容を持つウエブサイトを特定した場合、その所有者の特定がなされる。当該情報は検察官に送付され、更なる手続きを要するか否かの判断がなされる。ここでも困難の一つは、当該サーバーが外国領域にある場合である。人種憎悪を助長するウエブサイトの所有者に対する措置の効果は、外国当局による法的援助の要請を実現できるかどうかにかかっている。
ICERD4条(c)に関連して、1997年のポーランド憲法13条は、全体主義、ナチス、ファシズム、共産主義、人種的国民的憎悪目的の組織は禁止されるとしている。憲法188条は正当の目的や活動に関する審査を憲法裁判所の管轄と定めている。政党法14条は政党登録に関する事案をワルシャワ地裁の管轄としている。1989年の結社法29条は、結社が違法行為を行った場合の司法手続きを定めている。
前回審査の結果としてCERDが裁判官や検察官などへの研修プログラムの重要性を指摘したため、報告書は、刑事訴訟法335条1項のもとでの、ヘイト・クライムの訴追率を報告している。2012~15年には15.4%~18.6%だったが、2016年には約20%になった。
2014~16年に収集されたヘイト・クライム情報によると、実行者を特定できない事案が減少し、新規件数よりも終結件数が増加した。
犯罪の訴追にかかわる職員への研修が実施され、2009年以来、司法・検察研修所によって裁判官及び検察官への人権教育を行っている。教育課程において人種差別撤廃条約が主題とされている。
検察庁はヘイト・クライム訴追に関する会議を開催しているが、2012年6月13日には「ヘイト・クライム被害者」という会議であった。2015年9月、司法・検察研修所は「検察官とヘイト・クライム研修」を共同実施するためOSCE民主制度・人権局と協定した。研修は2015年と16年に実施された。
警察庁は2012年と16年にヘイト・クライム研修プログラムを実施した。2016年4月29日、新しい研修プログラム「法執行官のための反ヘイト・クライム研修」を作成した。職務中にヘイト・クライムに直面する警察官がヘイト・クライムと闘うのに必要な知識を提供する。ヘイト・クライムに関連する捜査活動、適切な対応、予防、被害者の処遇を全国的に教示する。2017年6月までに10万人の警察官がこの研修を受けた。
警察庁犯罪局は、ヘイト・クライムと闘うために2015年に内務省と協力して「人種主義・排外主義犯罪と闘う」という研修を採用した。偏見に基づく犯罪やインターネット上の犯罪と闘うための法的側面に焦点を当て、ヘイト・スピーチと表現の自由に関する国際法を学ぶ。2015~17年には119人の警察官、刑事施設職員がワークショップに参加した。