Tuesday, March 15, 2016

70年代フェミニストのヨーコ節

飯村隆彦編『ただの私 オノ・ヨーコ』(講談社文庫、1990年)
ジョンが亡くなって6年後の1986年に出版され、90年に文庫。
冒頭はオコ・ヨーコの人生を振り返った「わが愛、わが闘争」。幼年時代、アーティストとしての活躍、結婚と離婚、ジョンとの出会いなど。次の「日本男性沈没」は当時大笑いの文章だったが。男女関係が逆転した筒井康隆的世界。「母性社会の必然性」「女性上位万歳」「家も政治も女と交代したら」は70年代フェミニストのヨーコ節だ。今となってはやや古臭いところもないではないが。「未来は・・・未知数」はアバンギャルドとロックの合体に示されるアーティストの一面。「先ず母親、次にアーティスト」はジョンが殺され、ショーンを守らなくてはならない苦しい時期をどう乗り切ったか。最後に「女」、そして「明日またいくんだ」――ジョンの思い出に捧げられた珠玉のエッセイ。
「世界で一番多忙で有名な未亡人」と呼ばれたヨーコの当時を知ることのできる本だが、ジョンの思い出の部分はわずか。それでも懐かしく、感銘を受ける。性差別主義のルビがフェミニズムになりかねない現在の日本で、ヨーコのフェミニズムを想起する意味は大いにあるだろう。

編者の飯村隆彦は、当時ヨーコと同様、ニューヨークのアートシーンで活躍した映像作家で、『オノ・ヨーコ 人と作品』の作者でもある。ジョンと出会う前の、アーティスと・ヨーコを知ることのできる本。