18日、ジュネーヴで開催されている国連人権理事会31会期において、NGOの国際人権活動日本委員会(JWCHR、前田朗)は、「人種差別撤廃国際デーを記念しての世界中の人種差別に関するパネルディスカッション」において次のように発言した。
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<人種差別撤廃国際デーを記念しての世界中の人種差別に関するパネルディスカッションの有益な議論を歓迎する。ダーバン宣言と行動計画は、人種主義および人種差別と闘うための国連の包括的枠組みと堅固な基礎を提供した。15年前、ダーバンの世界会議において認めたことは、植民地主義が人種主義、人種差別、外国人嫌悪、関連する不寛容をもたらすことであった。植民地主義が引き起こす苦痛を認識し、植民地主義を非難し、その再発を予防すべきことを認識した。また、人種主義と人種差別は武力紛争の根源の一部であることを認めた。今、われわれは新植民地主義と人種差別の密接な関係を認識するべきである。この点で、25年前に国連国際法委員会が行った植民地支配犯罪に関する歴史的議論を想起したい。1991年、ドゥドゥ・ティアム特別報告者は、国連国際法委員会第43会期に、人類の平和と安全に対する罪の法典草案を提出した。特別報告者は、植民地支配犯罪を平和に対する罪と特徴づけた。残念なことに、国際法委員会は1995年に植民地支配犯罪を採用しないことに決めた。今、われわれはこのことを想起し、新植民地主義と世界中の人種差別の不可分の結びつきを理解するために、このテーマを深く探究するべきである。>
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国連70年、人種差別撤廃条約50年、ダーバン宣言15年の人種差別撤廃国際デー(3月21日)を記念してのパネルディスカッションだった。パネラーは
-Mr. Doudou Diène, Chair of the
International Coalition of Sites of Conscience and former Special Rapporteur on
contemporary forms of racism, racial discrimination, xenophobia and related
intolerance
-Ms. Margarette May Macaulay, Commissioner,
Rapporteur on the Rights of Women and Rapporteur on the Rights of
Afro-descendants, Inter-American Commission on Human Rights
-H.E. Mr. Abdul Samad Minty, Chair of
the Ad Hoc Committee on the Elaboration
of Complementary Standards and former Permanent Representative of South Africa
to the United Nations Office and other International Organisations at Geneva
-Ms. Mireille Fanon Mendès-France,
Chair-Rapporteur of the Working Group of Experts on People of African Descent
事務局が事前に用意したキーノートを見ると、植民地主義への言及がない。昔なら当然、植民地主義の話がメインだったはずなのに、と考えてみると、21世紀になってというか、9.11以後というか、文明の衝突やら、反テロやら、いろんな文脈で語られているうちに、植民地主義は過去のことにされつつある。4人のパネラーも植民地主義について語らなかった。政府発言の中で植民地主義に言及したのは中国、キューバ、ヴェネズエラくらいのものだ。そこで、NGO発言の中で、植民地主義と新植民地主義について言及した。
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ダーバン宣言については、
植民地支配犯罪については、前田朗「植民地支配犯罪論の再検討」『法律時報』2015年9月号参照。
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Syrah, Jean-Rene Germanier, Valais, 2014.