筆坂秀世『日本共産党と中韓』(ワニブックスPLUS新書)
成田空港の書店にあったので買ってきた。予想通りの内容だったのが残念。
副題が「左から右へ大転換してわかったこと」で、著者の肩書は「元日本共産党参議院議員・性策委員長」で、「元・日本共産党NO.4が保守派になったら驚いた!」と大きく書いてある。もう10年近く「NO.4」と連呼している。
内容は、かつての日本帝国主義時代、コミンテルンが日本革命ではなく、中国革命やソ連擁護を主たる関心としていたことから始まる。これが「左から右へ大転換してわかったこと」というのは、あまりにも奇妙だ。コミンテルンが中国革命やソ連擁護を主たる関心としたのは100%当たり前で、それがわからなかったという常識はずれの人間は世界に著者だけではないだろうか。
その後、本書は毛沢東批判、共産党野党外交批判、慰安婦問題での日本共産党の右往左往の批判と続く。さらに、東京裁判、靖国問題だ。
その内容はちょっとレベルが低すぎで引用する気になれない。呆れるほど古臭い「右翼」の所説を垂れ流しているだけだ。私が知る「右翼」に、ここまで旧態依然とした思考の持ち主はまれだと思うが。尊敬に値する「右翼」も多数いるが、著者はレベルが違い過ぎ。
左から右へ、上から下へ、縦から横へ、立場を変えるのは思想信条の自由であり、著者の発言も自由だ。日本共産党について知られざる情報を提供してくれるのなら、立場はどうであれ、有益なはずだ。
だが、共産党という言葉を見たら必死で叩くだけの信条は、いささか理解の外でもある。NO.4の大物になった著者としては、10年たっても、いまのご主人様に認めてもらうためには、ひたすら共産党叩きをしなくてはならない、ということか。
いつまでたっても「自分」を見つけられずにいるのだろう。まあ、いいけど。