Grand-Saconnex
News. 120819
17日からベルン観光だった。もう10数回目だが。スイスの首都ベルンはアーレ川に沿ってつくられた小さな町で、街並みそのものが世界遺産。大聖堂、監獄塔、時計塔、クマ公園、バラ公園、ベルン美術館、パウル・クレー・センターがある。
ベルン美術館では常設展(ドラクロワ、モネ、シスレー、シニャック、ゴーギャン、セザンヌ、マッケ、マルク、ホドラー、ジャコメッティなど)のほかに、ドイツのアーティストのアントニオ・ザウラの作品展、およびウガンダ出身のザリナ・ビンジの写真展をやっていた。
他方、パウル・クレー・センターは、一つは「ポルケとクレー」展(ドイツの画家ジグマル・ポルケとパウル・クレー)、もう一つは「マイスター、クレー」展をやっていた。ワイマールのデザイン学校バウハウスでは、教員をマイスター、学生を旅人と称していた。クレーは1921~31年、バウハウスの教授だった。展示は、クレーの講義ノート(形態論、色彩論)が中心。
❉松尾匡『新しい左翼入門――相克の運動史は超えられるか』(講談社現代新書)
明治期のキリスト教社会主義対アナルコ・サンジカリズム、大正期のアナ・ボル論争、続く日本共産党の福本・山川論争、日本資本主義論争、さらに戦後の共産党対社会党左派・総評、など、左翼の歴史を、理論派と実践派の2つの対抗する流れとして把握して、すべてをこの観点に集約して書いた1冊だ。よくこれだけ単純化したものだと感心する。しかも、著者は、これは左翼だけではなく、右翼にも、日本の近代全体にも当てはめることのできる図式だという。図式主義の権化。一昔前は、小阪とか、今村とか、現代思想をチャートで解説するのがお得意な便利屋さんたちがいたものだ。中身はさして重要ではない、といった調子で。それに比べれば、新書1冊で左翼の流れを説明している本書が採用したのは、よくできた方法であり、これでいいのだろう。不満があれば、別の観点での説明を試みればいいだけのこと。今どき「左翼入門」など売れないと思っていたが、タイトルに「左翼」が入ったら出版部数が増えることになった(!)という。これも著者の功績。著者は、立命館大学教授で、著書に『近代の復権』(晃洋書房)『はだかの王様の経済学』(東洋経済新報社)などがあるという。本書は800円と手軽なお値段なので、左翼とは何か知らない若者も、そんなつもりはないのに左翼と呼ばれてしまった運動家も、骨の髄まで本格左翼も、ぜひ一読を(笑)。