村山治『検察――破綻した捜査モデル』(新潮新書)
https://www.shinchosha.co.jp/book/610481/
<最強の捜査機関は「時代遅れのガラパゴス」に
記者クラブとの関係、「国策捜査」の深層、不祥事続発の背景まで検察取材の第一人者が徹底解説>
大阪地検特捜部事件、小沢一郎事件などで証拠改竄・捏造が批判を浴び、繰り返し醜態をさらした検察を長年取材してきた朝日新聞記者による新書だ。これまでに『特捜検察vs金融権力』『市場検察』を書いているという。
取り上げられている話題、事件、具体例はほとんど知っていることばかりだが、随所に匿名で検察関係者の話が出て来るところが、いちおうのウリだ。
厳しい検察批判というよりは、検察取材を続けてきた立場からの検察再生の期待を込めた批判であろう。
これまでの新聞記者による検察ほんと違うのは、第一章が「諸悪の温床『取調べ』」というところだ。これも大阪地検特捜部事件や小沢一郎事件のおかげか。「人質司法」批判にもきちんと言及している。もっとも、相変わらず、昔の平野龍一の議論程度しか見ていない。その後の刑事法研究の水準を踏まえていないが、やむをえないか。