Sunday, September 30, 2012

ニコニコニコン、恥かきニコン


新藤健一編『検証・ニコン慰安婦写真展中止事件』(産学社)


 

韓国写真家・安世鴻氏のニコンサロン写真展「事件」をめぐる経過と真相を世に問うブックレットである。

 

「慰安婦」問題の真実を訴えようとすると、ただそれだけで固まってしまう社会。見えざる手によって表現が押しつぶされる社会。日本はこの20年、変わらない。

 

歴史の事実に目を向けることを恐れ、ひたすらごまかす。事実を歪めたり、なかったことにして、安心を得ようとする。

 

それだけならまだしも、被害者を貶めたり、他人の意見や表現を抑圧し、国際社会で恥をかき続ける。そんな「日本的」行動様式をニコンも見事に再演してくれた。NHK番組改ざん事件を思い出した人も多いだろう。

 

本書は日本語とハングルの対訳つきだ。最近はこうした出版も増えてきたようだ。西欧に行けば、英語フランス語とか、フランス語ドイツ語の対訳本は珍しくない。手間暇かかるし、コストもかかるが、こうした出版によって日韓の間の垣根を少しでも低めていくことも大切だ。編者及び担当編集者に敬意を表したい。

 

新藤健一:1943年、浅草生まれ。1964年、共同通信社入社。ニュースカメラマンとして帝銀事件・平沢貞通被告の獄中写真、韓国の朴正煕大統領暗殺事件、連合赤軍事件、ダッカでのハイジャック事件などをスクープ。写真部次長、編集委員などを経て、2003年に退職。現在、東京工芸大学非常勤講師。20123月、国連本部で開催された写真展 3.11 ユニセフ東日本大震災報告写真展』(日本ユニセフ協会主催)のキュレーターを務める。著書に『疑惑のアングル』(平凡社)、『写真のワナ』(情報センター出版局)、『映像のトリック』(講談社)など。

 

まえがき
Chapter
 1 ニコンサロンと写真家、安世鴻
Chapter
 2 突然の中止通告の理由
   寄稿① ニコンサロン・安さん写真展取り消し問題 豊田直巳
Chapter
 3 地裁の正論、ニコンの暴論
Chapter
 4 厳重“すぎる”警備体制
   寄稿② 慰安婦問題――河野談話とマイク・ホンダと安世鴻 溝上明
Chapter
 5 日本社会の縮図、ニコン事件
   寄稿③ ニコンの「政治的」介入が映し出したもの 綿井健陽
政治的なカメラ――あとがきに代えて
   ■資料 全記録 ニコン慰安婦写真展中止事件の経緯