郷原信郎『検察崩壊――失われた正義』(毎日新聞社)
<緊急対談! 「小沢事件」の中、東京地検特捜部で起きた虚偽公文書作成事件。
小川敏夫前法務大臣、石川知裕衆院議員、大坪弘道元特捜部長、八木啓代氏ら注目の論者と共に、検察の嘘をすべて暴く。
6月27日の記者会見時、報道関係者・一部国会議員のみに配布され、最高検察庁がいまだ一般市民への公開を拒否している、本事件の内部調査についての「最高検報告書」、本事件の発端となった「田代報告書」も全文掲載!>
小川敏夫前法務大臣、石川知裕衆院議員、大坪弘道元特捜部長、八木啓代氏ら注目の論者と共に、検察の嘘をすべて暴く。
6月27日の記者会見時、報道関係者・一部国会議員のみに配布され、最高検察庁がいまだ一般市民への公開を拒否している、本事件の内部調査についての「最高検報告書」、本事件の発端となった「田代報告書」も全文掲載!>
元東京地検特捜部検事で弁護士、組織のコンプライアンス問題の第一人者・の郷原信郎が、東京地検特捜部事件(小沢一郎・陸山会事件、田代検事報告書偽造事件)をテーマに4人の人物と対談している。4人の人選が凄い。
元法務大臣・小川敏夫、元小沢一郎秘書で衆議院議員の石川知裕、元大阪地検特捜部長でフロッピディスク改竄事件の犯人隠避罪・被告人にされている大坪弘道、そして歌手で「健全な法治国家のために声を上げる市民の会」代表の八木啓代。
いずれも「渦中」の人物であり、4つの対談すべてを通じて、事件の真相を多角的に、文字通りえぐり取るように解明している。待望の書である。
“最高検、東京高検、東京地検の犯罪者集団”はグーの音も出ないだろう。
どの対談も具体的で明晰ですぐれているが、特に鮮やかなのは「これは日本という国で検察が起こしたクーデター」という八木啓代の指摘である。この視点が従来欠けていた、ないし弱かったのは否めない。小沢一郎がどうかという問題ではなく、検察による民主主義破壊を許してはならないという立場から、検察犯罪を徹底的に追い詰める八木のたたかいは見事である。凛としてたたかう八木に拍手喝采。
なお、本書は、この間の大阪地検特捜部事件と東京地検特捜部事件によって検察の正義が失われたという立場である。つまり、それ以前の検察には正義があったという前提である。郷原、小川、大坪は検察出身なので、自分たちは正義を遂行していたと言いたいのだろう。
しかし、国際人権規約の自由権規約委員会や、拷問禁止委員会から繰り返し指摘されてきたように、日本の刑事司法は重大人権侵害を続けてきており、検察実務は違法な実務である。本書においても、検察の正義が失われたことが繰り返されるが、刑事司法における身柄拘束や取調べの在り方そのものが人権侵害であることには触れられていない。