朴三石『知っていますか、朝鮮学校』(岩波ブックレット)
<目次>
はじめに
1 事実を知ることの大切さ
――学生の感想から考える
2 朝鮮学校で学ぶ生徒たち
――日本の学校・地域社会との交流
3 なぜ日本に朝鮮学校があるのか
――在日朝鮮人と朝鮮学校の由来
4 どのような教科書を使っているのか
――反日教育でなく友好のための教育
5 朝鮮学校と日本社会
――何をどうするべきか
<著者の言葉>
このブックレットは,つぎのような五つの内容で構成した.
第一に,朝鮮学校や在日朝鮮人にかんする日本の大学生の素直な感想,意見を紹介することにしたい.そのなかに朝鮮学校を正確に知るための論点が示されていると思うからである.そこには普通の日本人がもちやすい印象や感覚,情報の特徴も反映されていると思う.
第二に,朝鮮学校とはどのようなところなのかを知るために,生徒たちの学校生活のさまざまな様子を紹介することにしたい.
第三に,そもそも近代において朝鮮人がなぜ日本で暮らすようになったのか,なぜ日本に朝鮮学校があり,なぜ子どもたちは日本の学校に通わず,あえて朝鮮学校に通うのか,などについて述べたい.
第四に,教科書から朝鮮学校を知るという視点から,朝鮮学校で使われている教科書の内容と特徴について述べたい.
第五に,朝鮮学校は日本社会にとってどのような存在であるのかについて述べたい.このなかで朝鮮学校の生徒や親たちや教師たちが,日本社会と日本人の皆さんに何を訴えたいと考えているのかということについて紹介したい.
このブックレットが,今まで朝鮮学校についてあまり知らなかった,あるいは知る機会がなかったという大学生や高校生,先生方など多くの日本人の皆さんの参考になれば幸いである.なお,本書の内容については,すべて筆者の責任においてまとめたものであることを付記しておきたい.
日本による植民地支配の結果として、日本に強制連行されたり、渡航を余儀なくされた朝鮮人が自分たちの手で作り上げた朝鮮学校の歴史と現在を、ブックレット1冊でわかりやすく提示している。世界的には植民地支配下で移住した人々は宗主国社会に同化・統合されるのが一般的だが、朝鮮人は在日朝鮮人と呼ばれるように、民族性を保持して日本社会に在住し続け、朝鮮学校を守り育ててきた。朝鮮語を学び、朝鮮の歴史を学び、朝鮮の文化を身につけることで、朝鮮人としてのアイデンティティを育んできた。日本社会による差別と同化圧力、帰化行政にもかかわらず、今も朝鮮学校に子どもたちの声が響き渡る。その秘密を本書は教えてくれる。朝鮮高級学校を高校無償化から排除するという執拗な差別政策を続ける日本の異様さが浮き彫りになる。