鎌田慧『さようなら原発の決意』(創森社、2012年)
http://www.soshinsha-pub.com/bookdetail.php?id=340
<未来世代への責務
利権まみれの原発絶対体制の闇と罠を照射。
被曝大国・日本だからこそ、脱原発の欧州とともに
次世代のため、原発を拒絶する生き方へ>
長年にわたって原発の実態と原発利権の構造を告発し、原発廃止アクションの先頭に立ってきた鎌田の新著だ。
「第1章
原発絶対体制の崩壊」の冒頭、「原発拒絶の思想と運動」が提唱される。浪江原発に反対した舛倉隆に言及しての次の指摘は特に重要だ。
<電力会社の人間はだますのが専門だから、はなから交渉には応じないと言うことで、戦術として非常に有効だったのです。『民主主義では敵の言い分も聞かなければならない』などとよく言われますが、原発を建設しようとする側とは論争にもならない。科学的な論争にもならない。推進派のやることは、先ほども述べたように、つまるところ金で反対派を潰すことでしかありません。『相手の話を聞かなければならない』『対案を出せ』ということでは、その交渉が始まってしまうのです。>
鎌田は民主主義を否定しているのではない。ニセ民主主義やニセ科学論争の土俵に安易に乗せられることを戒めているのだ。
原発建設だけではない。3.11以後に「メルトダウンではない」と絶叫した東電や学者たち。「プルトニウムは安全だ」とうそぶくニセ科学者たち。内部被曝問題をごまかすダマシタこと山下。大飯原発再稼働の電力不足論。どこでも、ニセ民主主義が活躍する。そして、インチキを見抜いて批判するべき脱原発の側から、ニセ民主主義やニセ科学に密通するトンデモ意見が出てくる。
原発拒絶の思想とは、人々の平和と安全を守るための断固とした抵抗の思想であり、民衆自身の手による本物の科学をつくり出す決意でもある。