Sunday, November 11, 2012

琉球独立論の新たな地平


松島泰勝『琉球独立への道――植民地主義に抗う琉球ナショナリズム』(法律文化社)


 

琉球/沖縄に関心のあるすべての人に薦めたい。

 

沖縄独立論には長い歴史がある。本書は、それらにも学びつつ、新しい議論を展開する。議論の立て方は目次を一瞥すればすぐにわかる。

 

 はじめに

第1章 琉球コロニアリズムの歴史
 植民地としての琉球/琉球におけるコロニアリ
 ズムの歴史/琉球の開発とコロニアリズム/軍
 事植民地としての琉球

第2章 太平洋島嶼国・地域の脱植民地化と琉球
 琉球と太平洋諸島との関係/太平洋諸島の独立
 /ハワイの脱植民地化運動/ニューカレドニア
 と仏領ポリネシアの独立運動/グァムの脱植民
 地化運動

第3章 南アジア地域とスコットランドの独立と
    琉球
 南アジア地域の独立/南アジア地域と太平洋諸
 島の独立過程の比較/イギリスからの独立を目
 指すスコットランド

第4章 国連と琉球
 人民の自己決定権行使による琉球の脱植民地化
 /琉球人の自己決定権と国際法

第5章 琉球ナショナリズムの形成
 琉球とエスニック共同体、ネイション、ナショ
 ナリズム/琉球ナショナリズムの形成―琉球独
 立運動の課題と可能性/「2・1決議」の意味
 ―国際法と琉球ナショナリズム

第6章 「琉球自治論」の批判的検討
 日本国頼みの自治論の何が問題か/「本土並み
 自治論」からの脱却

第7章 琉球自治共和国連邦の将来像
 なぜ琉球は独立を求めるのか/琉球独立のため
 の前提条件/琉球自治共和国連邦の将来像

 
 

著者:「1963年琉球・石垣島生まれ。石垣島、南大東島、与那国島、沖縄島にて育つ。那覇高校、早稲田大学政治経済学部卒業後、早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。博士(経済学)。在ハガッニャ(グァム)日本国総領事館、在パラオ日本国大使館において専門調査員として勤務。東海大学海洋学部准教授を経て、現在、龍谷大学経済学部教授、NPO法人ゆいまーる琉球の自治代表。単著として、『沖縄島嶼経済史―12世紀から現在まで』藤原書店、2002年、『琉球の「自治」』藤原書店、2006年、『ミクロネシア―小さな島々の自立への挑戦』早稲田大学出版部、2007年がある。編著として西川潤・松島泰勝・本浜秀彦編『島嶼沖縄の内発的発展―経済・社会・文化』藤原書店、2010年がある。」


第1に、重要なのは、日本とアメリカとの関係の下での琉球の歴史と現在を踏まえつつ、同時に広い世界史的視野で琉球独立論を展開していることである。まず、植民地独立付与宣言や先住民族権利宣言の法理論を採用している。さらに、太平洋諸国や、南アジアと欧州における小国の独立に関する研究が背景となっている。
 

第2に、小国は経済的にやっていけるのか、自立できるのかというよくある問いに対する応答の仕方が重要である。小国独立不安論は、実は「大国からの経済援助論」とセットになっている。しかし、実態を見れば、大国からの経済援助は大国の資本のためになされるのであって、投下資本は大国に還流し、小国の自立を一層破壊する。小国の独立はその地域の内発的発展として構想される必要がある。日本のニセ援助に頼る思考では、独立以前に、そもそも沖縄の発展と市民生活が阻害される。この点は非常に重要である。
 

第3に、先住民族の連帯と協働が組み込まれている。米軍基地のない沖縄を目指す平和と自律の思想は、グアムの米軍基地にも反対し、琉球民族とチャモロ族の連帯を必要とする。あるいは、海に沈む島ツバルについて、ツバル国民1万人に琉球移住の可能性を提供して、共に生きる太平洋の先住民族の連帯をめざす。
 

太平洋には軍隊のない国家が11カ国ある。『軍隊のない国家』執筆のために11カ国に訪問した。本書の筆者は、グアムとパラオに住んだ経験があるという。現地滞在で得た知識と知恵が本書に活かされている。何しろ『ミクロネシア』の著者だ。
 

琉球独立のために、国際的に何をするべきか(国連先住民族作業部会、脱植民地化特別委員会、太平洋諸島フォーラム、非同盟諸国会議党)。国内で何をするべきか(琉球自治共和国連邦の具体像)が明確に論じられている。
 

琉球独立論に新たな地平を切り開いた本書をもとに、徹底討論が行われるべきである。
 

琉球人民の自己決定権を中核に。