Friday, November 09, 2012

レイシズム研究に学ぶ(5)


鵜飼哲・酒井直樹・テッサ・モーリス=スズキ・李孝徳『レイシズム・スタディーズ序説』(以文社、2012年)

 

今日のBGMは、知花竜海Duty Free Shopp.とカクマクシャカの「音アシャギ」。2006年に出た傑作アルバム。特に沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事件を歌ったラップ「民のドミノ」が凄い。

 

さて、今回は、鵜飼哲、酒井直樹、テッサ・モーリス=スズキ、李孝徳による座談会「新しいレイシズムと日本」だ。これで本書のすべて。ただし、巻末にエティエンヌ・バリバール論文「レイシズムの構築」が収録されているが。

 

座談会は、レイシズム分析の射程、日本のポストコロニアル、血統主義と生地主義、生物学的レイシズムなどをめぐって進行する。日本の国籍法や、移民政策も問い直される。イギリスと日本という帝国の退却戦の差異も登記される。多文化主義の難しさも。それとの関連で在特会という病理現象も分析されるが、被害者意識に着目している。加害者が被害者意識に突き動かされて、さらに加害に走る。ヘイト・クライムでは「防衛的ヘイト・クライム」と呼ばれる。よそ者が我が町にやってきた、という意識が、次には我が町が汚染される、取られる、文化が変わるなどの恐怖になり、犯行に走る。

 

日本には差別撤廃法がないこと、人種差別撤廃条約を批准しながら怠慢であることも指摘される。その通りである。さまざまな話題が取り上げられ、読み手にとってはおもしろい座談会である。

 

本書全体に学ぶことで、日本における反レイシズムのために、何をどう分析し、運動につなげていくか、考えることがたくさんできた。課題を次々と提示してくれるという意味で、スリリングな著作である。再読の必要がある。