Saturday, July 04, 2015

日韓関係を見直すための実践的研究

吉澤文寿『日韓会談1965――戦後日韓関係の原点を検証する』(高文研)
http://www.koubunken.co.jp/0575/0570.html
この10年ほどの間に、日韓両国で公文書が10万枚公開された。日本政府に公開を求める市民団体の共同代表として公開請求と裁判を続けてきた歴史家である著者は、日韓両政府の公開文書を読み解いて、1965年の日韓条約に至る過程をていねいに明らかにする。基本的な問題意識は次のようにまとめられる。
「日韓基本条約が締結され、国交が「正常化」して50年が経った今、なぜ、日本と韓国は歴史認識や領土問題で対立を繰り返すのか?」
日本軍性奴隷制(「慰安婦」)問題や、竹島問題をはじめとする両国の間の矛盾と軋みの出発点こそ日韓条約であった。10数年にわたる日韓会談の結論としての日韓条約は、問題解決のための条約ではなく、問題隠蔽のための条約になってしまった。植民地支配責任を明らかにすることなく、中途半端な認識のまま、双方が都合の良い解釈の余地を残して妥協した結末であった。
このことを著者は、条約締結過程、韓国併合条約の「無効」論、「在日韓国人・法的地位」、文化財問題、竹島/独島領有権問題に即して、検証する。専門研究だが、一般読者にも読みやすく理解しやすい。
著者は次のように述べる。
「歴史対話を欠いたまま、「未来志向」を目指す手法は限界に来ている。」

現在でも、「慰安婦」問題や竹島問題を棚上げにして、日韓が「未来志向」でやっていくべきだという主張がよく登場する。しかし、「未来志向」論は少しも新しくない。それどころか50年以上に及ぶ失敗の歴史、破綻の歴史を持つ、手あかのついた主張に過ぎない。「何が未解決なのか」。植民地主義を克服するために、「原点」に返る必要がある。