二〇〇二年に条約に加入したホンデュラス政府が人種差別撤廃委員会に提出した初めての報告書(CERD/C/HND/1-5. 13 May 2013)によると、憲法第六〇条は、平等の権利と差別からの保護を定め、「性別、人種、階級その他の人間の尊厳を損なう理由によるすべての形態の差別は処罰される」となっている。二〇一〇年八月一七日、最高裁判所憲法部は平等原則について、すべての者が法の下に平等の取り扱いを受けること、特別の事情の下で異なる取り扱いがなされることを妨げないことを確認した。憲法第六一条は、いかなる差別もなしに、安全、自由、平等、所有権を保障されるとしている。
刑法第三二一条は差別犯罪を次のように定める。「性別、人種、年齢、階級、宗教、政党、政治的姿勢、障害、その他の人間の尊厳を損なう理由に基づいて他人を差別した者は、三年以上五年以下の刑事施設収容および三万以上五万レンピラ以下の罰金に処す。実行者が外国人の場合、判決執行後に国外追放することができる」。
この定義は条約第一条の人種差別の定義に合致していない。条約の定義に合致させるために、刑法第三二一条の改正案が国会に提出されている。「性別、ジェンダー、年齢、性的志向、ジェンダー・アイデンティティ、政治的意見、市民的地位、先住民やアフリカ系ホンデュラス人の一員であること、言語、国籍、宗教、家族的背景、財産状態、社会状態、異なった能力や障害、健康状態、身体的外見、その他の人間の尊厳を損なう理由に基づいて、個人又は集団の権利の行使を、恣意的又は違法に、妨げ、制限し、減少させ、妨害し、または無効にした者は、三年以上五年以下の刑事施設収容および三万以上五万レンピラ以下の罰金に処す」。「実行行為に暴力が伴った場合、刑罰は三分の一加重される。公務員や公的従業員が職務中に行った場合、累犯の場合、当該公務員や公的従業員の刑事施設収容期間を二倍とする。実行者が外国人の場合、判決執行後に国外追放することができる」。
刑法第三一九条はジェノサイドの罪を定める。ジェノサイドの煽動及び共謀も処罰される。ジェノサイドの直接煽動は八年以上一二年以下の刑事施設収容、間接煽動は五年以上八年以下の刑事施設収容である。
司法人権省は、刑法第一一七条の殺人罪について、憎悪動機があった場合は刑罰加重事由とするという改正案を国家に提出している。
労働法、子ども青年法、民事訴訟法、公選法、基礎教育法、文化遺産保護法などにも差別禁止規定がある。