前田朗「差別と闘う教育(一)北欧における反差別教育・文化政策」『解放新聞東京版』863号(2015年7 月)
人種差別撤廃条約第7条は差別につながる偏見との闘いを打ち出している。教育、文化、情報の分野で差別と闘うことが締約国の義務であるが、これまで日本では条約第7条に関する情報があまり紹介されていない。
ヘイト・スピーチの刑事規制に反対するために「処罰ではなく教育が重要だ」と唱える無責任な論者があまりに多い。こうした論者は、どのような教育なのか、その対象やカリキュラムはどうあるべきか、について決して語らない。世界各国で人種差別やヘイト・スピーチと闘うためにどのような教育政策がとられてきたのかを決して語らない。
本稿では北欧諸国(アイスランド、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン)が人種差別撤廃委員会に提出した報告書から、条約第7条に関する記述を紹介した。多彩な内容の教育・文化政策がとられてきた。成果を上げた例もあれば、そうでもない例もある。いずれにせよ、教育だけでヘイト・スピーチ対策なりえないことも明らかになるだろう。