青木理『日本会議の正体』(平凡社新書)
http://www.heibonsha.co.jp/book/b226838.html
<安倍政権とも密接な関係をもち、憲法改正などを掲げて政治運動を展開する、日本最大の草の根右派組織「日本会議」。虚実入り混じって伝えられる、その正体とは。関係者の証言を軸に、その成り立ちと足跡、活動の現状、今後の行方を余すことなく描く。
反骨のジャーナリストがその実像を炙り出す、決定版ルポルタージュ。>
*
プロローグ
外国メディアはどう報じてきたか/日本メディアの追随
第1章 日本会議の現在
第2章 “もうひとつの学生運動”と生長の家──源流
第3章 くすぶる戦前への回帰願望──日本会議と神道
第4章 “草の根運動”の軌跡
第5章 安倍政権との共振、その実相
*
抵抗ジャーナリズムの先頭を走る著者による「日本最大の右派組織」「極右」の日本会議論である。日本会議についてはすでに菅野完や俵義文の著書がある。
本書の半分は同じ内容である。日本会議結成に至る歴史――生長の家、長崎大学、元号法制化など、同じことを著者なりの観点で追いかけている。
本書の読みどころは、青木の独自取材の部分である。青木は以下の人々へのインタヴューを紹介している。例えば、杉並区議会議員で、日本会議首都圏地方議員懇談会副会長の松浦芳子。元参議院議員の村上正邦。全共闘運動に対抗して右派団体を作ったが現在は運動から離れている伊藤邦典。師岡熊野神社宮司の石川正人。そして、“右派政界の次期エース”稲田朋美。
これらのインタヴューによって、文書・資料で確認された日本会議の歴史と現在に、それぞれの関係当事者の証言が重なり合って、日本会議という組織の特質が立体的に描き出されている。
青木によると、もっと多くの人々に取材を申し入れたが、日本会議や神社本庁関係からはほとんど取材を拒否されたという。一度は取材を受けると言った人物まで後に取材を断って来たともいう。「あとがき」には、日本会議事務局長の椛島有三からも断られたが、明治神宮会館の「奉祝行事」の際に椛島を見つけて、再び取材を申し入れたが、「最後の最後まで椛島氏は口を開かなかった。応諾の言葉も、拒否の言葉も、あいさつの言葉すらも、まったく発しなかった。一言も、である。私たちとあいさつを交わすことすら拒絶する――そんな強固な意思を示しているかのようだった」という。
青木も述べているが、取材を受けるも拒否するも自由である。だが、日本会議という巨大組織で、現実政治に圧倒的に強い影響を与え、安倍政権を動かしているとさえいわれ、憲法改正を呼号している団体の事務局長の行動としては異様というしかない。ここに日本会議の決定的に重要な特徴がある。