Monday, August 08, 2016

監禁状態での取調べを恋愛に喩える倒錯

大澤孝征『元検事が明かす「口の割らせ方」』(小学館新書)

成田空港の書店でタイトルだけ見てまとめ買いした中の1冊。このところ黙秘権との関係で取調べに関する論文を書いているところなので、検事による取調べ状況について何か面白いことがあればと思ったが、何もなかった。
著者は1972~79年に検事で、その後は弁護士のため、大半は昔話だ。昔話でも取調べの状況は基本的に同じなのだろうが、参考になるような話はない。検事調べや弁護士としての体験をもとに、一般的に、企業や家庭での対話のありかたを工夫しましょう、という本。「本音を喋らせる」「何を話すべきか」「どう話を聞くべきか」など。
嘘をつく被疑者にはどんどん嘘を言わせておいて、すべてウラをとって追い詰める方法を推奨しているのはなるほど。
だが、著者は、検事と、身柄拘束されている被疑者があたかも対等に話しているかのごとく描き出している。だから、取調べ検事と被疑者の関係をなんと「恋愛関係」に例えている(2度も)。恋愛体験がないのかもしれない。ここに大きな嘘があることに気づこうとしない。あるいは、気づいても強弁しているのか。
えんえんと数百時間も身柄拘束しておいて、恋愛関係と思い込むのはビョーキである。世界にもまれな、日本検事の特徴だろう。だからとんでもない冤罪が絶えないのだ。
ごく最近でも、6月に出た松橋事件再審開始決定、7月に発覚した八王子誤認起訴事件、8月に入って志布志事件民事判決、そして、まもなく東住吉事件判決だ。人権侵害、拷問、虐待、嘘の自白強要、誤判という「日本司法の王道」!?