俵義文『日本会議の全貌――知られざる巨大組織の実態』(花伝社)
教科書問題の第一人者で、長期にわたってこのテーマを追いかけてきた著者である。『徹底検証あぶない教科書』『安倍晋三の本性』『徹底批判「国民の歴史」』『東アジアの歴史認識と平和をつくる力』など、著書は数十冊。その蓄積を踏まえて、本書では日本会議の全貌に迫る。彼らはどこからきて、何を目指し、何をしてきたのか。次に彼らは何をしようとしているのか。
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第1章 日本会議設立までの歴史
第2章 日本会議と日本会議国会議員懇談会の結成
第3章 教育の国家統制を推進する「教育改革」
第4章 草の根保守運動
第5章 日本会議が取り組む改憲以外の「重点課題」
第6章 安倍政権を支える右翼議員連盟と右翼組織
資料編(議員名簿、役員名簿、年表など)
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事実をして語らせる。そのために徹底的に調査してデータを積み重ねる。俵には俵の仮説があるが、仮説を証明するためではなく、手堅く事実を一つひとつ積み上げ、点検して、仮説を検証する。それゆえ、本書では俵の思想は「前面」にはでていない。しかし、データをして語らしめるという意味では、俵の思想が「全面」的に配備されている。
菅野完の著書が、日本会議の思想と行動様式を追いつつも、中枢の個人の歴史と個性に焦点を当てているのに対して、俵は組織の構成、目標、基本性格、その運動としての広がりに焦点を当てる。キーパーソンの個性も重要だが、日本の政治社会の中でいかなる位置にあり、どのような人脈をつくり、何を行っているかを的確に把握することが目指される。
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日本会議の系譜を探る 菅野完『日本会議の研究』(扶桑社新書)
http://maeda-akira.blogspot.ch/2016/08/blog-post_7.html